サンリオ常務であり、「HBSの最も成功した卒業生31人」に選出された鳩山玲人氏はこう述べている。「ハーバード・ビジネススクール(HBS)在学中に出会った教授の中で、特に思い出深い教授が、アニータ・エルバースさん」。
エルバース教授はエンターテインメントを題材に扱う「Strategic Marketing in Creative Industries」(クリエーティブ産業における戦略的マーケティング)という異色の人気授業を担当する。その授業では映画、テレビ、音楽、出版、演劇、スポーツからナイトクラブまでのあらゆるエンターテインメントをビジネスロジックで解釈する。
これまで研究してきたエンターテインメントビジネス理論の集大成として作り上げたのが、書籍『ブロックバスター戦略』(鳩山玲人監訳・解説、庭田よう子訳)。鳩山玲人氏も「自分自身もブロックバスター理論の信者」と公言している。そのブロックバスター戦略を、事例とともに解説していただく。
製作費1億2500万ドルで、全世界興行収入9億7473万ドルの『ハリー・ポッターと賢者の石』。
製作費2億5000万ドルで、全世界興行収入13億2811万ドルの『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(シリーズ最終作)。
観客が移り気で、失敗の確率も極めて高い映画の世界で、1作に100億円以上の巨額の製作費をかけるのは、正気と言えるだろうか?
『ハリー・ポッター』シリーズの配給元であるワーナー・ブラザースのような大手スタジオや、エンターテインメント業界の大手コンテンツ制作者にとって、この問いに対する答えは間違いなく「イエス」だ。一見、リスクを伴うこのアプローチが、競争の激しい現代の市場で通用する理由を説明する前に、まずはワーナー・ブラザースのとったアプローチを詳しく見てみよう。
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