ハリウッド映画の超巨額投資がペイする理由 ハーバード流「ブロックバスター戦略」とは

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映画を製作費予算別に見ても、興味深いことがわかる。5年間に公開された全作品の上位5%の映画は、総製作費の5分の1を占め、全世界興行収入の4分の1以上を占めた。上位10%の映画は、製作費のおよそ3分の1を使ったが、興行収入の5分の2を生み出しており、製作費と興行収入の差額のほぼ半分を占めていた。

よって、ワーナー・ブラザースが行った最大の投資から、不釣り合いなほど大きなリターンが生み出されたことがわかる。その対極にある少額の投資は、大量の映画に投じられたせいもあったが、ほとんど影響を与えなかった。

少数の大作映画に賭けるようになった何年かの間に、ワーナー・ブラザースの総興行収入は主な競争相手を上回り、業績を向上させることも証明した。

制作費削減で業界史上最悪の損害を招いたNBCテレビ

ワーナー・ブラザースでホーンの戦略が大当たりする一方、競合する巨大メディア複合企業では、ひとりの幹部が出世階段を駆け上がっていた。

ニュース番組『トゥデイ』の現場制作責任者だったジェフ・ザッカーが、2004年にNBCテレビグループの社長の座に、のちに最高経営責任者(CEO)にまで上り詰めて、当時、全米トップのテレビ放送網だった同グループを取り仕切るようになったのだ。

2007年、親会社NBCユニバーサルの指揮を執るようになったとき、ザッカーはうなぎ上りの番組制作費を削減する方針を打ち出した。多くの点で、ホーンがワーナー・ブラザースで採用した戦略とは正反対だった。「人気ではなく利ザヤを求めて管理する」と別の経営幹部は言い放った。

しかし、ザッカーのこの戦略は、さんざんたる失敗に終わった。2010年、鳴り物入りで就いた職を肩たたきされる憂き目にあった。NBCはあらゆる点で大きな後れを取っていた。ザッカーやほかの経営幹部が重視した利益率も例外ではなかった。ザッカーの在任中に、NBCは視聴率ナンバーワンから4位にまで滑り落ち、ABC、CBS、FOXに追い抜かれた。ゴールデンタイム「必見」の放送として評判を築いてきたNBCにとって、考えられない転落だった。

ライバルだったある幹部はザッカーについて、「マスメディア業界で史上最悪の損害をもたらした幹部の事例」(『ニューヨーク・タイムズ』紙より)と烙印を押した。かなり辛辣な批評かもしれないが、ザッカーの「利ザヤを求めて管理する」戦略が悲惨な結果に終わったことは明白であった。

ザッカー辞任後にNBCユニバーサル・テレビジョンの会長に就任したジェフ・ガスピンは、「利ザヤを求めて管理する」戦略は役割を終えたことを認め、エージェントやプロデューサー、そのほかのテレビ業界関係者らに、NBCはヒット狙いの方針に立ち戻ると約束した。

「NBCに勝利をもたらすためにやって来た」とガスピンが語るように、同社の新たな目標は、最高の番組を放送することだった。NBCはそのために破格の予算を組んだ。2010年秋のシーズン、テレビ史上前例のない13もの新シリーズを開始した。その中には一流のプロデューサー、たとえばジェリー・ブラッカイマー(代表作『トップガン』『CSI:科学捜査班』)、デイヴィッド・E・ケリー(代表作『アリーmy Love』)らの手による莫大な予算をかけたものもあった。NBCは同シーズンだけで製作費に1億5000万ドルを費やし、視聴者を再び獲得するためにマーケティング費用を大幅に増やした。

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