「やたら歴史で物事を語りがち」現代中国人の心理 『中国ぎらいのための中国史』安田峰俊氏に聞く

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いざ国力が強くなったら、朝貢関係とも低く扱われた時代とも異なる態度を取るようになった。現在は他国との関係について、文面に「対等」という言葉が入るようになったが、中国に「対等」の感覚や実感はない。だから国際社会でどう外交をすればいいのかが、中国の中でもはっきりしていないのかもしれない。

それが攻撃的な外交スタイルである「戦狼外交」や、西側に対する恫喝的な姿勢につながっている可能性はある。

「直訳メッセージ」に翻弄されないために

――中国側が歴史的な言い回しや考えでやっていることを理解する必要がありそうです。

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2024年5月に中国の呉江浩駐日大使が、台湾に関わり続ければ「(日本の)民衆が火の中に連れ込まれることになる」と発言した。日本政府が厳重抗議したほどのきつい言い回しだが、本人たちは中国のことわざを引用しただけで「やけどするぞ」くらいのつもりで言ったのだろう。

そもそも在外公館が発信するときは通常、現地のネイティブ人材にチェックさせて、表現に問題がないかを確認してから出す。ただ、少なくとも中国の日本国内の在外公館は日本人を雇用したがらずネイティブチェックもせずに、直訳しただけのメッセージを出して騒ぎになっている。

中国側がちゃんとしていないことを日本側が忖度して考えなければならないのはおかしい。ただ、欧米圏と違い日本は同じ漢字圏ということで中国の発信を読み解く能力は相対的に高い。歴史や古典が会話の中で当たり前に出てくることを考えれば、くみ取る力があって損はない。

知識がないと中国で円滑なコミュニケーションはできないので、現代中国を理解していくために、雑学としてだけでなく実用的に中国史を学び勉強することは必要だ。

撮影・編集:田中険人
劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

東洋経済編集部員・記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。現在は、特集や連載の企画・編集も担当。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。早稲田大学台湾研究所招聘研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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