日本人はとかく今現在しか考えない 『日本人はなぜ株で損するのか?』を書いた藤原敬之氏に聞く

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──欧米の考え方は違う……。

欧米では、自分たちと違う神の世界があると、子供の頃から教えられる。この神の世界を将来や未来、あるいは目標と置き換えて考えることは、彼らにとってたやすい。将来や目標から逆算して、今何をしなければいけないか、と動く。そしてステップアップしていく。視点の置き方が日本人と違う。日々の行動でもギャップをどう埋めるべきかと腐心する。投資でいえば、株価を考えるのに、保有したことで得られる配当を現在価値に割り引いたものの総計としてとらえる「割引配当モデル」など、その典型だろう。

──ご自身も、彼我の違いを認識するのにけっこう時間がかかったようですね。

米国や英国に日本株のプレゼンテーションに行って連戦連敗に陥った。問題は英語力ではない、自分の考えを伝えていないから相手の心に響かないのだと気がつくまで、かなりの時間を浪費した。ほかの人の成功例をつまみ食いしてシナリオを作っていたので、説得力がない。それに気づいてから真剣に勉強した。

──勉強した?

森羅万象の鏡であるといわれる株価だ。株価はすべての要素を凝縮して表している。この最も難しいものにアプローチをしていくのだから、人間の思考を総動員せざるをえない。そのため自然科学、人文科学、社会科学を問わず、世界の名著を濫読した。日本人でいえば、丸山眞男、小林秀雄、そして埴谷雄高には誰もが触れてほしいと思う。日本人の思考はすごい、と思うようになる。たとえば、丸山眞男には、「日本人とは何か」の本質を教えてもらった。

 

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