シリアのバッシャール・アル=アサド大統領の父であるハーフィズ・アル=アサド(1930~2000年、大統領在任は1971~2000年)政権から始まり53年間も続いた政権が、わずか10日間の戦いで崩壊した。シリアはようやくアサドから解放された。
アサド政権崩壊後のシリアには各国のさまざまな利害関係が複雑に入り乱れているが、まずシリア政権崩壊前の構図を簡単に説明しよう。
トルコはクルド人による独立国家の樹立に反対なので、シリア北部を支配するクルド勢力「シリア民主軍」の支配地を解放させるため「HTS(後述のテロ指名組織)」を支援している。
シリア民主軍(クルド勢力)は支配地にクルド独立国家を樹立させるために戦っている。
イスラエルはシリア国内のイラン系武装勢力を叩くため、シリアを攻撃していたが、シリア崩壊後の動きを見ると領土拡大も目的だったとみられる。
アメリカはロシア軍の近くに駐留しているアメリカ軍を守るため、シリア民主軍を支援している。
そしてロシアは、シリア国内のロシア軍基地を保持するためアサド大統領を支援するというものだった。
反政府勢力の主軸はHTS
反政府勢力の主軸となるのは、タハリール・アル・シャーム機構(HTS)。元は「ヌスラ戦線」を名乗り、かつアメリカからテロ組織に指名されているこの組織の指導者は、アブ・モハマッド・アル・ジュラニだ。この名前は本名ではない。ジュラニとは、「ゴラン出身の人間」という意味になる。
これまで反政府勢力はシリア北部から第2の都市アレッポを制圧。さらに南下してハマー、ホムスと大規模都市を制圧して、ついに首都ダマスカスに到達した。
当然、シリア南部にも武装勢力は存在している。彼らはもともとジュラニ指揮下の勢力ではなく、外国からの支援も受けていない。
テロ組織に指名されているイスラム原理主義系の武装勢力が接近してきたため、イスラエルも当然緊張している。そのため、ゴラン高原を防衛するため、追加勢力を派遣している。
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