シリア・アサド政権「あっけない」崩壊の裏事情 弱まるイランの影響力、イスラエル一強の時代も

✎ 1〜 ✎ 30 ✎ 31 ✎ 32 ✎ 33
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

シリア北部と国境を接するトルコも、自国の国益は守りたい。トルコとしては、シリア北部でのトルコ軍の駐留を認め、国内のクルド独立運動を封じながらトルコと国交正常化してくれれば、アサド政権が続いてもまったく構わないと考えていた。

ロシアは現在、シリア国内に21の基地と93カ所の駐留・駐屯地を展開している。イランはシリア国内の外国軍の中では最多の530カ所の軍事拠点を持っている。

うち52カ所が基地だが、その他に多くの駐屯地やロケット製造工場がある。また、アメリカ軍やトルコ軍、クルド勢力のシリア民主軍(SDF)といった多くの基地がある。

ウクライナがロシア海軍基地を攻撃?

「ウクライナ諜報機関が、シリア沿岸にあるロシア海軍基地の攻撃を計画した」。アメリカ国防総省がメディアにリークした極秘文書に書かれた内容だ。

この文書によれば、シリア北東部で国土の4分の1を支配しているシリア民主軍支配地にいるウクライナの部隊がトルコ軍に対し、トルコ軍が支配するシリア北西部からシリア北西部沿岸のロシア艦隊を攻撃する計画を持ち掛けた。

トルコは2017年にカザフスタンのアスタナで開催されたロシア、トルコ、イランが仲介するシリア政府とシリア反体制派を含めた一連の会合「アスタナ会合」で、シリア国内における「緊張緩和地帯」の創設に合意している。

そのため、トルコはシリア沿岸のロシア艦隊攻撃の話に乗らなかったというか、乗れなかった。それでもウクライナ側に、ウクライナ特殊部隊が訓練しているシリア民主軍に無人機操縦の訓練をして、無人機とロケットをシリア民主軍に供与してロシア艦隊を攻撃させればよいとアドバイスした。

腹黒いアドバイスだ。トルコは自国内にクルド国家樹立を目指し、分離独立運動を行い、トルコ国内でテロを行っているクルド労働党がいる。そのため、クルド独立国家樹立を目指すクルド勢力を敵視している。

シリア民主軍は、トルコ国内のクルド民族居住地を加えたクルド独立国家樹立を目指している勢力だ。シリア民主軍をそそのかしてロシアを攻撃させれば、ロシア対クルド勢力の戦いになる。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事