24年の映画興収「年間トップ10」示すヒットの傾向 23年と比較するとどんな違い?トレンドを分析

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

邦画実写では、『ラストマイル』が残したインパクトは大きい。テレビ局映画といえば、ドラマの映画化が定番になるが、そのヒット規模が縮小し続け、いまや10億円に届かない作品も多くなるなか、シェアード・ユニバース(単体の作品が同じ世界戦にある)という新たな手法をヒットにつなげた。

同作は、人気ドラマ『アンナチュラル』『MIU404』(TBS系)と同じ世界線で起こる出来事を描く、原作なしのオリジナル作品だ。それぞれのドラマの登場人物たちが同一の作品に出演することでファンの関心を喚起し、映画への入り口を広げた。ただそれ以上に、野木亜紀子氏の脚本による、現代の社会課題をエンターテインメントに昇華させる社会派ストーリーがすばらしかった。手法と作品力の両輪が機能したヒットになる。

ラストマイル
『ラストマイル』(画像:ラストマイル公式Instagramより引用)

『ラストマイル』は、テレビドラマというコンテンツからの新たなオリジナルIP創出へ向けた動きとして、ひとつの成功事例となった。毎期のように話題作やヒット作を多く生み出し、ドラマシーンで存在感を示すTBSだが、映画においてもその野心的な取り組みは特筆すべきだろう。

東宝が続々とヒットを飛ばす

もう1つの今年の邦画の特徴は、映画業界の巨人・東宝が歴代新記録となる年間興収を上げそうなこと。これまでの最高興収は『君の名は。』『シン・ゴジラ』などが大ヒットした2016年の854億円だが、今年は900億円前後が見込まれる。

TOP10作品を見ると、その半分以上が東宝配給作品。『名探偵コナン』『ドラえもん』などの定番作品に加えて、『劇場版ハイキュー!!』『ラストマイル』『変な家』などのサプライズヒットが興収全体をボリュームアップさせた。

東宝の興収は、今年の市場全体の45%ほどを占めることになりそうだ。ヒット作が東宝に偏っているのはこれまで同様だが、全体のヒット規模が下がるなか、サプライズヒットに象徴される、東宝の新たな時代の流れに合わせたヒット創出への先鋭的な取り組みと精度の高さが、改めて示される年になった。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事