新型コロナウィルスによるパンデミック(感染爆発)はどうにか沈静化し、インフレも少なくとも先進国では収まりそうだが、世界貿易量の低い伸びがなんとも心もとない。そして世界は、ウクライナと中東という2つの戦争を抱えている。あんまり過大な期待を抱いてはいけない年であるように思える。実際にユーロ圏や日本、中国経済などは成長見通しが軒並み下方修正されている。
そんな中で目立つのがアメリカ経済の堅調さだ。今回も上方修正されていて、2023年、2024年と連続して3%近い成長を続けている。25年は2%台前半への減速が見込まれているものの、米連銀には利下げ余地があるからたぶん景気後退には至らなくて済むだろう。まことに恵まれた状況と言える。
そこへ飛び込んできたのが「トランプトレード」だ。ニューヨーク市場は株価が新高値を追っている。ドルの長期金利も上昇気味で、世界の為替市場ではドル高が進んでいる。「またトラ」リスクに怯える日本から見ると、なんだか理屈を超えた超常現象のように見えてしまう。
トランプ2期目も「3つのチャネル」は機能するのか?
ここで思い出されるのが、トランプ政権第1期のことである。著名エコノミストのエド・ハイマン氏は2017年3月のレポートでこんなことを書いていた。
「トランプの成長戦略には3つのチャネルがある。①Fiscal Stimulus(財政刺激策)、②Deregulation(規制緩和)、③Animal Spirits(アニマル・スピリッツ)――楽観度の平均、つまり消費者、住宅建設業者、中小企業、CEO のアニマル・スピリッツは過去最高レベルに達している」
いや、①と②はわかるけど、③はいったい何のことなのか。アメリカの企業家や消費者のマインドが好転するのは結構だけれども、彼らはトランプさんが仕掛けようとしている貿易戦争や過激な移民政策のリスクを感じていないのか?
そんな8年前の筆者の疑問をあざ笑うかのように、トランプ第1期政権下の株高は続いた。ゆえに「トランプトレードに逆らっちゃいけない」というのが教訓となるのだが、そのメカニズムについては今も釈然としないままである。
今回、第2期政権の発足を控えて、またもトランプトレードが始まっている。上記3大メリットのうち、①「財政刺激策」は今回も実現するだろう。共和党は僅差ながら上下両院で多数を握っており、「財政調整法」を使って予算案は楽に通すことができる。
第1期政権で実現した「トランプ減税」は、2025年末で失効することになっているけれども、2026年1月からは新たな減税が行われることだろう。トランプさんは法人減税や「チップ非課税」も公約に掲げており、どこまで踏み込めるかは興味深いところだ。
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