読売の値上げに見る「新聞・5000円の壁」の苦悩 大手がこぞって4000円台止まりも、今や高級品に?
しかし現状、販売店を「地域のハブ」にした新規事業は、販売店の自発的な動きはあるものの、新聞社主導では展開されていない。
「届けているのは、新聞社ではなく販売店だから」と言ってしまえばそれまでだし、また新聞販売店の形態を考えると、多くのものを届ける難易度は高いかもしれない。それでも、「それ以外をも届ける」ことを新聞社の社員たちが少しでも考えていれば、今の苦しい状況も違ったのではと筆者には思えるのだ。
新聞とネットでは、生産も流通も異なるマインド
2年前の2023年1月、筆者は動画ニュース番組「ABEMA Prime」で、「新聞離れ」をテーマにした回に出演した。その際に語ったのが、「新聞社は生産(記者)と流通(販売網)が分離されているが、ネットでは一体で考えなくてはならない」といった、収益モデルの違いだ。
ネットメディアでは記事の多くが、媒体そのもの、もしくはポータルサイトなどの配信先で読まれる。そのため原稿を書く段階から、「どこで、どのように読まれるか」を意識しておく必要がある。
新聞のように、一面があり、社会面があり、経済面があり……といったトータルコーディネートではなく、各記事が細切れにされた状態でも、コンテンツが成立するよう求められる。そのため、「メディア商売」であるのは共通ながら、新聞とネットでは、生産も流通も異なるマインドで考えなくてはならないのだ。
その点、新聞社には、時間的余裕があった。筆者は独立資本のネットメディア出身だが、新聞社のノウハウは、我々が一朝一夕で手に入れられるものではなく、全国に取材網を張りめぐらせ、人海戦術でネタを集めるスキームも、すぐには組み立てられない。
新聞社は、人材も資金もあり、軽減税率により税制面でも優遇されてきた。圧倒的な先行者メリットのなかで、新たな収益源を打ち出せず、既存事業の値上げで乗り切ろうとするのは、自らの持つ「特権的なプライド」に、あぐらをかき続けてきた怠慢としか言えない。
とはいえ、過去を憂えても仕方がない。目前にある「5000円の壁」を、ひとたび超えてしまえば、消費者離れは確実だ。物価高騰以前に「そもそもコスパが悪い」と思われている現状を変えない限り、新聞業界は残念な末路に導かれるだろう。
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