読売の値上げに見る「新聞・5000円の壁」の苦悩 大手がこぞって4000円台止まりも、今や高級品に?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

すでに大手紙では、2023年5月に朝日新聞(改定前は4400円)、同6月に毎日新聞(4300円)が、それぞれ4900円へ値上げしていた。両社と比較すれば、価格改定の時期や、新たな価格からすると、読売は踏みとどまっている印象を受ける。

新聞各社の月額購読料
新聞各社の月額購読料(編集部作成)

部数を見ても、読売は約600万部とされ、朝日(約350万部)、毎日(約150万部)といった他の大手紙よりは、まだ影響力を保っている。しかし、1000万部を突破していた1990年代を振り返ってしまえば、さほど好調とは言えない。

部数減の深刻化は、新聞業界全体の課題だ。日本新聞協会のデータによると、2000年代前半は5200万〜5300万部前後で推移していたが、2000年代後半から右肩下がりとなり、毎年100万部ほど減少した。そして、ここ最近は年200万部ほど減り、2023年は約2859万部に。1世帯あたりの部数は、2000年の1.13から、0.49まで落ち込んだ。

2025年1月には、産業経済新聞社(産経新聞社)のタブロイド紙「夕刊フジ」が休刊する。休刊の理由について、産経新聞社は「デジタル端末の普及、コロナ禍に伴う帰宅時等の購読機会の減少、新聞用紙をはじめとする原材料費、輸送コストの上昇など」を背景に、経営合理化や経費削減に取り組んだものの「夕刊紙としての一定の役割を終えた」とした。夕刊フジを取り巻いていた環境は、まさに今回の読売値上げと共通している。

「情報の対価」として、納得感を得られているか?

いわゆる「新聞離れ」が叫ばれて久しいが、もはや離れる以前に、そもそも新聞購読が選択肢の中に入っていない可能性もある。大きなネックになるのが、価格設定だ。単発ならまだしも、毎月の固定費としては高すぎると感じさせてはいないか。

そこでポイントとなるのが、月額4800〜4900円が「情報の対価」として、納得感を得られているかだ。ニュース配信と単純比較はできないが、例えば動画配信サービスを見ると、Netflixは広告付きプランが月890円からとなっている。

そもそも現代では「ニュースはネットで見るから、わざわざ新聞を購読しない」と考える消費者は多く、またネット上でも、新聞社の公式電子版サービスではなく、ポータルサイト経由で情報収集されることが多い。

つまり、月額購読料といった「部数からある程度の収益が予測できる収入源」ではなく、広告出稿やPV、ポータルサイトのトップページに掲載されるか否かといった「不確定要素の多い収入源」に頼らざるを得ない現状がある。

安定しない収入に依存する背景には、それだけ新聞不況が喫緊の課題であることがある。

しかしながら、安易に手を出そうとすることで、思わぬ失敗を招くケースもある。この11月には、毎日新聞のサイトが「こたつ記事」による誤報を行い、謝罪した。

こたつ記事とは、取材に頼らず、SNSなどの公開情報を基に作成された記事を指すが、中には真偽不明な情報を、よく確認せずに拡散しているケースがある。毎日の場合は、とあるアイドルの「なりすましアカウント」を本人と認定して、投稿を記事化してしまったことが問題となった。

次ページ「新聞販売店モデルの崩壊」
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事