2024年が「最もふりかけが売れた年」になった背景 節約志向の高まりで大人の「夜ごはん」でも重宝

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

前述の記事を執筆した日本食糧新聞社の吉岡勇樹記者はこう分析する。

「1つに、ふりかけは物価の優等生という点が挙げられます。実質賃金の減少期間と、ふりかけの市場規模が拡大した時期はほぼ一致しています。

ふりかけといえば、朝ごはんや昼食のお弁当のお供というイメージがありますが、現在はインフレで家計が苦しいため、作れるおかずが少なくなっています。

それを補うために夕食でもふりかけが登場するようになりました。

過去をさかのぼっても、1993年の『平成の米騒動』でタイ米が緊急輸入された時や、バブルが崩壊して日本経済がデフレ基調になった2000年代にもふりかけ市場は活況を呈しました。

収入減少や食料品の値上げなど『食卓の危機』が発生すると、安くておいしいふりかけは“庶民の味方”として重宝されてきたのです」

丸美屋食品工業は、ふりかけ業界でシェア1位を誇る。

広報宣伝室の青木勇人室長はふりかけ人気の背景として「子ども時代にふりかけに親しんだ世代が親となり、わが子と一緒に味わう“ロングセラーの好循環”がある」と話す。

昭和の親世代が持つ「ふりかけの罪悪感」

「高度成長期、日本のお母さんたちは“良妻賢母”のイメージから、食卓にふりかけを使うことに罪悪感を覚えていました。

当時は、自分が楽しくふりかけを食べた記憶を持つお母さんが少なく、子どもに『おかずがあるのだから、ふりかけではなくおかずでご飯を食べなさい』と注意することが珍しくなかったのです。

ところが、ふりかけをおいしく食べた記憶を持つ団塊ジュニアが親世代になった2000年代前半から、親子でふりかけを味わう光景が当たり前になりました」

この“ふりかけの罪悪感”については少し補足が必要だろう。食文化研究家で『ふりかけ 日本の食と思想』(学陽書房)の著作がある熊谷真菜氏が解説する。

「ふりかけの源流の1つに、おかずをご飯にかけた“ぶっかけ飯”があります。煮物や汁物といったおかずをご飯にかけて食べる。

そのおかずの部分に洗練を重ねたのがふりかけの歴史なのですが、原点の“ぶっかけ飯”は庶民が編み出した食べ方です。当時は重んじられた白米なので、ふりかけで白を汚すのを嫌う人もいました。

一方でお寺の精進料理や料亭の松花堂弁当では昔からご飯の上にゴマ塩やシソのふりかけが乗っていました。真っ白なご飯とふりかけの上品な彩りをめでる食文化も同じように根強いものがあったのです」

昭和までは、この“上品派”と“下品派”のせめぎ合いが続いていたが、今では下品派が完全に姿を消してしまった。これもふりかけ人気に影響を与えたと言えそうだ。

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事