2024年が「最もふりかけが売れた年」になった背景 節約志向の高まりで大人の「夜ごはん」でも重宝
熊谷氏はこう続ける。
「興味深い動きの一つとして、1980年代後半から混ぜ込むタイプのふりかけが登場したことが挙げられます。
これにより、ふりかけはまぜご飯や炊き込みご飯の代わりも務められるようになりました。ワカメなど体にいい食材も使われるようになり、ふりかけが健康食品として見直されるようになったのです。
またもう一つは、外国でのふりかけ人気です。外国人観光客で日本のふりかけをお土産に買う人が増えています。
海外で地元で人気の高級レストランに行くと、FURIKAKEがトッピングされた刺し身など日本人には思いも寄らない斬新な一皿が出てきます。
日本人と同じように“風味”を楽しむ外国人が増えたことで、ふりかけが世界で売れるようになっています。これも市場の拡大に寄与していると思います」
災害時の「非常食」でも活躍
今は絶好調のふりかけ市場だが、その未来はどうなるのだろうか。丸美屋食品工業の青木室長は、ふりかけの「簡便、時短、安価、商品バリエーションが豊富」というセールスポイントは大きいと指摘する。
「手放しで市場が拡大を続けるとは考えていませんが、ふりかけが安くておいしく、バリエーションが豊富だという点は重要です。毎日、同じふりかけだと飽きてしまいます。
またご両親とお子さんでは好きなふりかけが違うということも珍しくないでしょう。ところが小売店では何十種類ものふりかけが販売されています。
たとえ日本人の食の志向が変化しても、お米だけは継続して食べる文化があれば、志向の変化に応じて新しいふりかけを開発・販売することが可能です」
前出の吉岡記者は、ふりかけが“家庭の外”にも飛び出しつつある動きに注目しているという。
「例えば、炊きたてのご飯の香りが苦手だというお子さんは珍しくありません。そのため食育の一環として教育現場でふりかけが注目されています。
ふりかけはかつお節やノリなど、香りの豊かな食材が使われているため、お子さんがご飯を食べやすくなる。日本人にとって白米をしっかり食べることは食育の最重要事項ですから、給食で活用されることが増えています。
また震災の現場でもふりかけは活躍します。
震災直後は調理の必要がないパンが重宝されますが、次第にお米だけは炊けるようになると、おかずがなくてもふりかけがあれば暖かい白米がおいしく食べられる。災害時でも強い味方なのです」
日本人の収入減、インフレによる物価高、外国人観光客の土産物、食育、震災時の非常食……ふりかけはどんな状況や環境でも重宝される。過去最大の市場拡大となるのも当然なのかもしれない。
(井荻稔)
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