セブンMBOに「伊藤忠が参画」の現実度と真意 争奪戦は早くもヤマ場、岡藤氏が語った腹の内

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伊藤忠にとってセブン&アイが持ち分法適用会社となる20%以上出資しなければメリットは薄れるが、過半数出資などセブンの支配株主となる意志はないとみられる。さらに、コンビニの商品価格はスーパーやドラッグストアなどほかの小売業態とも競合しており、セブンとファミマの2社だけの協力で価格を吊り上げることは困難だ。「伊藤忠の出資が独禁法違反と認定される可能性は低いだろう」(M&Aの専門家)。

むしろ困難なのは、伊藤忠グループ内での理解を得ることのほうだ。「岡藤会長の後継者」との下馬評もあるファミマの細見研介社長は、報道が出るまで今回の件で伊藤忠が参画を検討していると聞かされていなかった。

ファミマ社内では早くも「セブンに出資する代わりに、うちが売られるかもしれない」という不安の声が広がっている。長年競合関係にあった両チェーンのフランチャイズオーナーからの反発も避けられない。岡藤会長も、「出資するとなれば、複雑な方程式を解く必要がある」と語る。

そして何よりの問題が、巨額の買収資金をどう確保するか。創業家と伊藤忠からの出資に加え、セブン&アイのメインバンクである三井住友銀行を筆頭とするメガバンク3行が協調融資に向けて調整中であるとされる。

沈黙の三井物産

難しい駆け引きが続く中、沈黙を貫くのがセブン&アイに1.85%を出資する三井物産だ。

三井物産がセブンと取引を始めたのは1983年。弁当容器から取引が始まり、総菜の原料調達や物流構築、米国と中国での展開などにも取引を広げる。2001年には包括提携を結び、食料や繊維といった事業部を超えた枠組みでセブンを後方支援してきた。

したがって今回の買収提案に対し、業界では当初「三井物産がホワイトナイトになるのでは」(関係者)との見方もあった。が、別の関係者は「社内にはクシュタールによる買収を容認する声もあるほどで、現在は行方を静観しているところではないか」と語る。三井物産の堀健一社長も、「この件でコメントはしない」と寡黙だ。

関係者によれば、創業家側はセブン&アイの決算期となる2025年2月にも買収を完了する線で調整している。まずは年内にもセブン&アイの特別委員会での決議を目指す。

巨大なディールをあと3カ月ほどでまとめ上げることになるが、セブン&アイ関係者からは「これくらいのスピード感がないと対抗できない」との声が上がる。大型買収劇は、早くもヤマ場を迎えている。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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冨永 望 東洋経済 記者

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とみなが のぞむ / Nozomu Tominaga

小売業界を担当。大学時代はゼミに入らず、地元密着型の居酒屋と食堂のアルバイトに精を出す。好きな物はパクチーと芋焼酎。

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