自衛隊「ミサイル大量購入」が予算消化に過ぎない訳 「防衛予算をどう使うか」の末に決められた購入計画

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冒頭に挙げた問題点を解説しよう。第1に、ミサイルはすぐに旧式化してしまう問題だ。

ミサイルは技術の粋を尽くした最先端兵器だ。電波や光学技術、信号処理技術、素材、ロケットモーターの各要素について、同世代兵器の中では最新の技術が適用されている。

世代交代が早くすぐに旧式化

それゆえに、世代交代が早い。技術革新のサイクルは短く、すぐに新型が出現する。ミサイルの場合は10年くらいで世代交代となる。賞味期限が短いと言ってもよい。既存のミサイルはすぐに旧式化して使い道がなくなる。これはスマホが発売から数年経つとゴミとなるのと同じだ。

だからこそ、購入数の見極めが重要となる。多額の予算を組んで最新ミサイルを大量購入しても、弾庫に貯蔵している間に価値は減少する。場合によれば無価値となる。とくに国産ミサイルは厳しい。早い段階で不良在庫となりやすい性質がある。

アメリカ製ミサイルは「改修キット」の提供がある。旧式ミサイル向けの交換部品であり、それにより性能は改善する。

対艦ミサイルの「ハープーン」の場合、1977年製造の初期型でも最新型の「ハープーン・ブロック2」と同性能になる。対空ミサイルのSM-2も、最新型のSM-2Cまで改修できる。射程を除けば新規導入したSM-6と同等の威力を持つミサイルとなる。

対して、国産ミサイルは旧式化してもそのままだ。ハープーンの後に登場した対艦ミサイルASM-1やASM-1C、SSM-1は、1980年代技術のままで放置されている。GPS誘導や対地攻撃機能を追加することはないし、JP-10燃料への変更による射程延伸や、それを活かした再アタック機能導入はない。

そのために、将来に差がつく。例示した対艦ミサイルの場合なら、最新のJSMや、その原型NSMを模倣した12式改良型が普及した後でも、ハープーンなら充分に実用に耐える。しかし、国産型はそうではない。どうにも使い道がないミサイルになるのだ。

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