司法制度の政治問題化が懸念、台湾政治に危機感 多数派の専制を防ぐはずが、民主主義の不全に

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しかし、「交差任期制」は政治的混乱で機能不全となった。2007年、民進党の陳水扁総統が新たに8名の大法官を指名したが、うち4名が人事同意権をもつ立法院において国民党の審議拒否で任命されず、翌年には大法官1名が最高法院院長に転任し計5席の欠員が生じた。

それを受けて2008年に就任した馬英九総統はこの5席を補充指名した。そのほか、陳水扁政権時に就任した司法院長と副院長の辞職などを受けて、馬総統は1期目で11名の大法官を指名・任命することになった。

完全に破綻した本来の任期制度

同様の状況は蔡英文総統の時代にも続いた。今度は馬政権時に就任した司法院長と副院長が辞職したため、蔡総統も1期目に11名の大法官を任命できることになった。11名という人数は大法官定員の3分の2を超え、次期総統は4名しか任命できないという不均衡な状況を生んだ。

本来、大法官で欠員が生じた際には後任者の任期は前任者の残りだけと定められていた。しかし、憲法にある「大法官の任期は個別に計算する」という規定と矛盾が生じていたため、2015年からは任期を引き継がず、各大法官は個々に8年の任期をもつよう規定が改正された。4年ごとの半数改選という交差任期制の仕組みは制度的にも破綻した。

しかも、前政権で任命された司法院長と副院長が任期途中で政権交代後は辞職するという新たな慣例が形成されつつある。司法院長と副院長は政党政治の影響から距離を置くべき立場にあるが、総統と運命を共にするとなれば、憲法法廷の中立性は維持できるのかという疑問が生じる。

このように台湾の司法制度では深刻な政治化が懸念され、現在の状況は司法の中立性を損なうと与野党双方が批判してきた。ただ、民進党も国民党も政権を握ると、この歪んだ人事権を行使してきた。このような政治的思惑の優先は、大法官への市民の信頼を損ないかねない。

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