中国は経済発展のためにデジタルやAIの社会実装に邁進するが、その代償に懸念もある。
弱い景気が長引く中国の雇用情勢は、どれほど懸念すべきだろうか。厳しい雇用環境の象徴として若年層失業率の高さがよく指摘される。16〜24歳の調査失業率(就学生を除く)は、17.1%(10月)と高水準。若者の高失業率は、社会に失望して働く気力を失った「寝そべり族」を生み、社会問題ともなっている。
若年層失業率の高さは、景気の弱さとも関係しているが、労働需給の構造的なミスマッチと近年の中国政府の規制強化がかなり影響している。中国では大学・専門学校への進学率が6割に達する。親世代は、長年続いた一人っ子政策の下で生まれた唯一の子どもを大学に進学させることに熱心だ。
しかし、中国の産業構造は、それだけ多くの大卒ホワイトカラーを必要とするほど高度化しているわけではない。中国の第3次産業のGDP構成比は2023年には55%まで上昇したが、日本(74%、2022年)に比べて低い。加えて、若年層の就業機会を提供していたIT・プラットフォーム産業、不動産業、教育業に対して、近年、政府の規制が強化されたことが、問題をさらに深刻化させた。
もっとも、国家統計局によれば、16〜24歳の都市部人口のうち3分の2は大学などに通っており、労働市場に参入していない。ここから推計すると、同世代の労働力人口は全世代の労働人口の7%弱にすぎない。全世代の調査失業率は10月に5.0%と、コロナ前(2019年10月5.0%)と変わらない。全体としてみれば、雇用の安定が大きく損なわれている状況ではないと判断すべきだろう。
むしろ中国の雇用にとって今後憂慮すべきは、デジタル化やAIの影響ではないかと筆者は考えている。10月に北京で開催された中国の労働経済学会の会議では、デジタル技術とAIの発展には雇用創出効果があるとの楽観的な見方が支配的だったようだ。
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