司法制度の政治問題化が懸念、台湾政治に危機感 多数派の専制を防ぐはずが、民主主義の不全に

✎ 1〜 ✎ 55 ✎ 56 ✎ 57 ✎ 58
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

公聴会についても、開催自体は認めたものの、出席や証言の強制は違憲とし、政府関係者の出席は政治的責任の範囲内、一般市民の参加は完全な自由意思とされた。参加者には弁護士同伴や証言拒否の権利も認められた。

議会と政府の権力関係にバランス

これらの違憲判決の根底には、議会と政府の権力関係のバランスを保つ思想がある。議会は政府を監視する権限を持つが、それは政治的責任を問うためであり、罰則を科すような法的制裁の権限は認められない。政治的対立は最終的に選挙など民主的な方法で解決すべきだと判断されたのだ。結果として、立法院は行政監督機能自体を維持はするものの、強制力を伴う手段の多くを失うことになった。

これを受け、野党は強く反発した。国民党の林思銘書記長は「憲法裁判所は緑陣営(与党・民進党)の手先となり、立法院を屈服させた」と非難し、民衆党の黄国昌立法委員は「権力分立の名を借りて実際には権力分立を破壊する始まりの日となった」と強く批判した。

今回の憲法法廷の判決は与党側の完全勝利でも野党側の完全敗北でもなく、合憲部分と違憲部分を細かく分けて判断している。だが、最大の焦点だった立法院の監督権限の法的強制力が失われたことで、憲法判断への是非が与野党で分かれ、司法判断への政治的批判と憲法解釈制度の「政治問題化」を招いている。

政治問題化した背景には判決内容が与党寄りという問題よりも、憲法解釈制度における判事選定の方法もある。

台湾の憲法解釈制度は1947年の中華民国憲法に始まり、1948年から司法院大法官会議として運用が開始された。ただ国民党の一党独裁期、大法官は人権保障ではなく政権に正統性を与える機関として機能した。

現行制度の基礎は民主化後に築かれた。大法官は15名(任期8年、再任不可、うち2名が司法院正副院長を兼任)となり「交差任期制」を導入。15名を2グループに分け、4年ごとに半数を改選することで、政権からの党派的影響力を抑える仕組みだった。

関連記事
トピックボードAD