なぜ、国際教養大学で人材は育つのか 中嶋嶺雄著
秋田の国際教養大学は、就職率100%の新設大学として有名だ。歴史は浅く、2004年の開学。一般に新設校の就職率は「下駄」を履かせた数字が横行しているが、国際教養大学の「100%就職」は正真正銘。現在では企業人事だけでなく、大学関係者、産業人の関心も高い。
本書は、建学に携わり、国際教養大学の理事長・学長をつとめる中嶋嶺雄氏自らが経緯や大学のあり方、国際教養大学のカリキュラム、学生の成長などを語り、わかりやすく読める。読み通すのは容易だが、問いかけは強烈で、大学のあり方、人材教育のあり方、日本に欠けている人材力など、多くのことを考えさせられた。
国際教養大学は大学名称が示すように国際教養人材の育成を目指す大学であり、独自の教育プログラムが冒頭に紹介されている。
(1)授業はすべて英語で行う
(2)少人数教育を徹底(1クラス15人程度)
(3)在学中に1年間の海外留学を義務化
(4)新入生は、外国人留学生とともに1年間の寮生活
(5)専任教員の半数以上が外国人
(6)厳格な卒業要件
(7)24時間365日開館の図書館
この強烈な環境の中で、留年せずに4年で卒業できる学生比率は5割程度だ。トコロテン式に学生を卒業させる、日本の大学の伝統からするときわめて異質である。しかし、なぜこのような大学が成立したのかの背景について、わたしは知らなかった。また勘違いしていたこともあった。
国際教養大学は、「英語を学ぶ」大学ではなく、「英語で学ぶ」大学である。新入生が最初に課されるのは「英語集中プログラム(EAP)」だ。これは読み書きや聞き取り、会話のほか、講義の聴き方やノートの取り方、図書館での調査手法、議論やプレゼンテーションの技術、論文のまとめ方まで「英語で学ぶための英語」を週20時間みっちり学ぶものだ。