SLの運行には、手間もカネもこんなにかかる

観光振興の起爆剤は、一筋縄にはいかない

蒸気機関車が多数運用されていた昭和40年代までは、検査修繕設備を持った工場が国鉄の路線網のあちこちにあった。だが、動力近代化が進むにつれて、圧倒的大多数を占める電気機関車やディーゼル機関車向けの施設への転換が進み、ごくわずかだけ残される動態保存用の蒸気機関車の検査が困難となるのは明らかであった。

もちろん、法令に反しては蒸気機関車の運転はできない。それゆえ梅小路蒸気機関車館、国鉄、および同館を受け継いだJR西日本は、蒸気機関車だけではなく、検査修繕設備の維持に腐心してきた。さらに、まだ技術者が多数、残っていた開館当初から、運転のみならず、検修技術の継承に務めてきた。これは、大きな功績とすべきであろう。

法定検査を実施できるかどうかが、蒸気機関車の動態保存において、最大のハードルであるとも言える。設備や技術が必要なことは、述べてきた通り。さらに、全般検査の費用も、一説によると1両あたり1回数千万円~1億円以上かかるとされる。1988~1995年の間、北海道で運転されていたC62形3号機のように、この検査費用が捻出できず、やむなく静態保存(走らせずに置いておくだけ)に戻った機関車もある。

大井川鐵道で受け継がれている技術

JR西日本は、今後数十年にわたって蒸気機関車の動態運転を可能とすべく、京都鉄道博物館の隣接地に本格的な蒸気機関車検査修繕施設(検修庫)を建設中で、ほどなく完成する見込みである。ここでは全般検査など大規模な解体検査が可能となる他、京都鉄道博物館の来館者が作業を見学することもできる。同社が蒸気機関車の保存と向かい合い、必要な「人・物・資金」をきちんと出そうという「本気」の姿勢が、この施設からもうかがえる。

蒸気機関車の動態保存においては、国鉄やJR西日本などだけではなく、静岡県の中小私鉄である大井川鐵道の果たしてきた功績も、また並び賞される。

別表1は、蒸気機関車の動態保存運転を行っている鉄道会社の一覧であるが、「全般検査・修繕実施場所」に注目していただきたい。同社以外はすべてJR旅客会社の、車両センターなどと呼ばれる大きな検査修繕施設で実施されている。

同じ中小私鉄で蒸気機関車を保有し、運転を行っている秩父鉄道や真岡鐵道も、機関士や日常点検を行う要員の養成は自社で行っているが、蒸気機関車の大規模な検査修繕についてはJR東日本へ委託しているのだ。

次ページ蒸気機関車の動態保存を実現させるには
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