6割増の急成長「シチズン エル」手掛けた女性社員 地球環境や人に配慮したサステナブルウォッチ

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これをきっかけにCSRの部署と共同体制をとりながら、SDGsの視点から見ると、時計の製造から販売まで、一連の過程には、実にさまざまな問題があることに気づきました。先ほどの紛争鉱物の問題、二酸化炭素排出量の問題、過剰包装や数カ国語で書かれた分厚い取扱説明書などです。

こうして最終的には、「エシカル(倫理性)」をコンセプトとする方向性が固まり、種々の問題を1つひとつクリアしていきながら、「地球も自分も美しくする、エシカルなジュエリーウォッチブランド:『シチズン エル』」が誕生したのです。

子どもたちの未来を共感に

Mさんのエピソードの中で私が最も注目したのは、サステナビリティやエシカルといったコンセプトが、単にトレンドだからではなく、誕生した子どもの未来を思う心、子どもに内面の美しい人に育ってほしいという願いも込められていたことです。

売れる「値上げ」
『売れる「値上げ」』(青春出版社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

これこそがまさに、人の心に響くストーリーです。

『シチズン エル』は、2018年度の国内での売上が発売当初(2016年)の6割増と急成長を遂げています。Mさん自身はその背景を、

「購入層の中心はおそらく価格の点から上の年代が多いものの、学校の授業でサステナビリティやエシカルについて学んでいる若い方の意識が高いので、結果的に幅広い年代に支持されている」

と語っていました。

特に、中心的な購買層である比較的年齢が上の年代と、サステナビリティについての知識を学ぶ機会がある若い層の中間に位置する子育て世代。この世代の女性は、子どもにかかる養育費や教育費を考慮すると、自分のために高価な時計を買うことを逡巡するかもしれません。

しかし、この時計には、つくった人の子どもへの思いが込められ、子どもたちが生きる将来への配慮が尽くされた時計であると知れば、同じ子どもをもつ多くの母親が、その思いと配慮に共感を覚え、思わず手にとりたくなるのではないでしょうか。

深井 賢一 リブランディングコンサルタント

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ふかい けんいち / Kenichi Fukai

事業コンサルタント、株式会社YRK and常務取締役東京代表、株式会社ウェーブ取締役。1989年4月 株式会社ヤラカス舘(現・株式会社YRK and)入社。リブランディングコンサルタントとして、メーカーのカテゴリーマネジメントやストアマーケティング、スーパーやドラッグストアなどの売場開発などを得意とする。 2017年より、ソーシャルプロダクツのマーケットプレイスを運営する株式会社SoooooS.カンパニー取締役。2019年より一般社団法人ソーシャルプロダクツ普及推進協会事務局長として、ソーシャルプロダクツの適正な市場普及や、企業によるSDGsの本業化、サステナブルブランディングの導入に向けた、セミナー、研修、ワークショップ、コンサルティングに取り組んでいる。

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