もはやオオカミ少年化している「円安メリット」 円安効果の過大評価がポピュリズム化を招く

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すなわち、円安によって日本の輸出企業にとっては有利な状況となっているはずだが、輸出数量指数が増えるどころか弱含んでいる。

各国の輸出数量を指数化しているオランダ経済政策分析局(CPB)の輸出数量指数によると、日本の輸出数量指数は世界の輸出数量指数よりも弱い動きとなっている。

 

世界の輸出数量指数に対する日本の輸出数量指数の比率(日本が相対的に輸出数量を伸ばしているかどうかの指標)を確認すると、近年は低迷が目立っている。

低迷が目立っているだけでなく、為替相場との連動性がなくなっている点も重要だろう。

金融危機前までは円安になると日本の輸出数量指数は世界全体と比べて相対的に強くなる傾向があったが、金融危機以降は逆方向の動きが目立っている。「円安⇒輸出増」という「短期のJカーブ効果」は、もはや存在しない。

頼みの綱の「長期の効果」も沈黙の兆し

この背景について、金融危機後の円高局面で企業の海外移転が進んだことを指摘する見方が多い。

企業の海外現地生産・現地販売が進んだことで、円安になっても輸出(および国内生産)が伸びなくなってしまった(したがって円高は悪である)という指摘である。

この観点からすると、「円安⇒輸出増」という「短期のJカーブ効果」は期待できなくても、「円安⇒企業の国内回帰⇒さらなる円安⇒輸出増」という「長期のJカーブ効果」に対する期待は残っているようである。

確かに、世界の輸出数量指数に対する日本の輸出数量指数の比率と円名目実効為替の動きを2年間(24カ月)ずらして比較すると、アベノミクス以降の円安局面後、日本の輸出数量指数は相対的に少しだけ回復した局面があった。

しかし、今回の円安局面では回復の兆しが見えない。

「円安のメリットが出てくる」という主張は、もはやオオカミ少年化しつつある。

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