NATOは今年4月、大統領選に左右されない向こう5年間の、最大1000億ドルに上るウクライナ軍事支援計画をまとめた。欧州議会は最大350億ユーロを承認しているが、実際の拠出額は加盟国間の協議を踏まえて決めるため、ドイツの負担が増すのは必至と見られている。ウクライナ紛争で提供した武器、訓練、防空支援、人道支援などの総額は、2023年までに約1130億ドルとも見積もられている。
アメリカのNATO離脱はドイツにとっては背筋が凍るような話だ。戦後、アメリカの守りあっての国防との考えが定着していたドイツにとって、ウクライナ紛争以降の自国自主防衛の流れに重なるアメリカの撤退は、決定的な方向転換を迫ることになる。停滞するドイツ経済を圧迫するのは確実と見られる。
リトアニアなどのバルト3国、ポーランドなどは安全保障面でドイツを当てにしており、アメリカがNATO脱退後、これまで以上のドイツの責任を要求してくる可能性があり、これはさらなる経済的負担につながりかねない。
関税引き上げで中国製品が流れ込む
2つ目は、ヨーロッパからの輸入品に対する関税の引き上げだ。ヨーロッパでは目下、“トランプの貿易戦争2.0”は、第1期よりも悪い結果をもたらすと見られている。理由の1つはアメリカから締め出された中国製品が世界市場にあふれるとの見方が広がっているからだ。
事実、中国製電気自動車(EV)は、低価格でヨーロッパ市場を席巻しており、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は、ヨーロッパにおける急激な中国製EV拡大と、EVシフト失速の打撃で国内3工場の閉鎖に追い込まれた。今後、トランプ氏がアメリカに流入する中国製品を関税で締め出せば、生産過剰なさまざまな中国製品がヨーロッパに流れ込んできかねない。
ドイツ経済研究所の分析によると、新たな貿易戦争により、トランプ政権がEUに20%の関税を課し、EUが同様の報復措置を取った場合、トランプ大統領の4年間の政権下でドイツは1800億ユーロの損失を被り、ヨーロッパ最大の経済大国であるドイツは、本来よりも1.5%縮小する可能性があると指摘している。
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