ただ、防衛増額を確保するには財政赤字をGDP比3.5%未満に抑える必要があり、経済政策で意見が異なる連立3党政権を揺るがした。さらに来年度の予算審議を控えた現在、防衛費増額でも「債務ブレーキ」の遵守に必要な90億ユーロの財政の穴埋めで対立が深まった。
結果、リントナー財務相がショルツ首相と意見が合わず、財務相解任。もっとも政権崩壊の最大のきっかけとなったのは、ドイツ経済にとって救い主とされたアメリカ半導体大手、インテルがドイツに300億ユーロ規模の巨大な半導体工場を建設する計画を棚上げしたことが大きい。
延期理由はインテル側に負うところが大きいが、トランプ政権誕生で、インテルはアメリカ国内工場拡張に舵を切った形だ。3000人の新規雇用を見込んでいたドイツ政府がパニックに陥ったことは、政権維持に深刻なダメージをもたらした。
再浮上するアメリカ「NATO脱退」リスク
ショルツ氏が政権引き延ばしに動く一方、FPDは内閣不信任が可決される前に連立政権の退陣と早期解散、総選挙を行うことを強く要求している。それでも連邦議会選挙は最短で2月に前倒しすることしかできず、トランプ政権発足には間に合わない。
与党返り咲きの可能性の高い最大野党で中道右派の「キリスト教民主同盟(CDU)」とバイエルン州の姉妹政党「キリスト教社会同盟(CSU)」も圧力をかけている。
せめぎ合いが続くドイツだが、トランプ再選は経済的に3つのマイナス要因となる可能性がある。
1つは、アメリカの北大西洋条約機構(NATO)脱退リスクである。アメリカはNATOへの拠出金で突出しているが、トランプ氏は第1期政権でNATO加盟国の分担金増額を迫った経緯があり、今回の大統領選でも「自国を、本腰を入れて守る気のない国をアメリカは守らない」と発言している。
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