このグループの主張で興味深いのは、「力による平和」(peace through strength)戦略に言及していることだ。「力による平和」戦略とは、1980年代に当時のレーガン政権がソ連との外交戦略として採用した。
ソ連に軍事的圧力を掛けたことで、ゴルバチョフ政権をして、軍拡競争を断念させ、冷戦終結に導いたとして評価されている。つまり、プーチン政権に対しては今や、レーガン政権当時のような圧力外交が必要との考えだ。
レーガン政権並みの圧力外交?
トランプ氏がどちらのグループの主張を採用するのか。執筆時点で不明だが、近く発表されるとみられる国務長官、国家安全保障問題担当大統領補佐官などの安保関連人事で、方向性が見えてくる可能性もある。
一方で興味深いのは、ウクライナ側もこの「力による平和」を対アメリカ外交のキーワードにし始めていることだ。トランプ氏の再選決定直後、ゼレンスキー氏は電話で祝意を伝えた。これに合わせて、ゼレンスキー氏は共和党が「力による平和」路線を堅持していると評価して見せたのだ。
なぜゼレンスキー氏がこの時期に「力による平和」外交を強調し始めたのか。この背景には、ゼレンスキー政権がトランプ氏再登板の可能性をにらんで、実は1年前から始めた水面下の対アメリカ外交工作がある。
「バイデン以外なら誰でも良い」(anyone but Biden)。これが、この外交工作を始めたゼレンスキー政権の合言葉だった。ゼレンスキー政権としては、ロシアとのエスカレーションを恐れて、ウクライナからの武器供与の要請に対し、つねに及び腰で小出しにしてきたバイデン政権には失望していた。
このため、アメリカの次期大統領としては、決断力があるトランプ氏のほうがウクライナをより強力に支援してくれる可能性があると期待したのだ。トランプ陣営や共和党を相手に、プーチン・ロシアに対する「力による平和」の必要性と説き始めた。
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