"離婚"寸前の「米欧同盟」に"復縁"の道はあるのか かつての蜜月がこじれにこじれた根本原因

18世紀以降の世界を動かしてきた、大西洋を挟んだ欧州とアメリカの関係が根底から揺らいでいる。
理由はほかでもない。ウクライナ戦争をめぐって、アメリカのドナルド・トランプ大統領がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領よりもロシアのウラジーミル・プーチン大統領の主張を信じ、戦争がプーチン氏ではなく、ゼレンスキー氏によって引き起こされたかのような認識を示したからだ。
トランプ大統領はそれだけでなく、米欧同盟の要である北大西洋条約機構(NATO)から離脱する可能性もほのめかし始めた。大西洋を隔てた“離婚”も現実味を帯びている。
アメリカの「欧州離れ」が進み、軸足をロシアに移すようなことになれば、80年前に構築された世界の枠組みは根底から覆され、欧州が提唱してきた多国間主義も吹き飛んでしまう。軍事力や関税発動などの強権で自国の意のままに相手を操る、19世紀並みの帝国主義世界に逆戻りする可能性すらある。
安保をアメリカに依存してきた欧州の責任
トランプ・ゼレンスキー会談の激しい口論の後、アメリカがウクライナへの軍事支援を一時停止したことで、ロシアとの戦いは敗北に向かっているとの見方がある。この先、ロシアがウクライナだけでなく欧州を標的に軍事攻撃する場合、欧州がアメリカの軍事装備品なしで戦うのは実質的に不可能だ。欧州連合(EU)が決めている防衛装備増強のための域内軍事産業の生産能力では、ロシアの攻勢への対応が困難だからである。
第2次世界大戦後、欧州諸国は安全保障の面でアメリカへの依存を続けた一方、経済活動に専心し、社会福祉大国の構築に莫大な税金を投入してきた。トランプ氏が「公正ではない」と不快感を示すのもうなずける状況が続いた。個々のEU加盟国は国力に見合った相応の負担を負わず、欧州の安全を守るというEUの集団的責任を果たしてこなかったわけだ。
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