次期トランプ政権下で米国株高は本当に続くのか FRBは再び「あからさまな圧力」にさらされる?

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一方で、トランプ再選を好感した銀行株の上昇が示すように、ビジネスフレンドリーな規制緩和を次期トランプ政権が進めるとの期待もある。

現在のバイデン政権では、環境政策などを理由に、公的部門が肥大化、かつ政府によるビジネスへの積極的な介入がみられる。市場メカニズムを重視するトランプ氏は、法人減税を実現するなどアメリカ企業のダイナミズムを刺激するだろう。これまで慎重だった企業の設備投資意欲を刺激することが、アメリカ経済の底堅い経済成長を支えるとみられる。

もちろんリスクもある。減税政策が実現する前に、大統領権限を使った関税引き上げが、広範囲かつ短期間で実現すれば、サプライチェーンが混乱、そしてインフレが再加速しかねない。その際は株式市場にネガティブな影響が及ぶ。

ただ、覇権争いを演じている中国を封じ込めることが、関税引き上げの主たる目的とすれば、先述したとおり関税引き上げの対象が限られるとみられ、この引き上げ政策がアメリカ経済を失速させる可能性は低い。

FRBの体制そのものが揺らぐ可能性は低い

さらに、トランプ次期大統領は、前回の同政権時代と同様に、FRBの政策対応に対する自らの考えを述べて、あからさまな圧力をかけるだろう。ただ、インフレ安定と雇用拡大というデュアルマンデート(2つの使命)を課せられるFRBの体制そのものが揺らぐ可能性は低い。

2026年にジェローム・パウエル議長は任期を迎えるが、よりハト派志向を持つ人物が議長に選出される可能性が高く、この点もアメリカ経済の成長を支えるだろう。

以上を踏まえると、レッドスイープ期待で上振れした米国株市場については、短期的には材料出尽くしで下げる場面があってもおかしくない。ただ「2025年にかけて経済の安定成長が続く」という市場の期待は次期トランプ政権下で、より高まる中で、株高基調は簡単には崩れないだろう。
(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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