"つながり"を取り戻せ、孤独を予防する居場所 深刻な孤立に陥る前にいかに孤独を防げるか

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課題の1つは、男性参加者を増やすこと。囲碁やマージャンの日は男性の割合が高まるが、それでも全体の男女比は3:7ほど。「企業の役職に就いていた男性ほど、なじむのに苦労する」(秋元さん)。誰でも気軽に立ち寄れる場所を、引き続き追求する。

自由価格制の自立した食堂

[世田谷区]タノバ食堂

孤独の予防を目指し、月に1度オープンする食堂がある。東京都世田谷区で2023年10月に始動した「タノバ食堂」だ。

9月下旬、色とりどりの夏野菜を使った手作り料理を囲んで、地域の住民たちが集まっていた。この日初めて食堂に参加した70代の女性は「これまでずっと働いていたから、町内会の人たちと関わりがなかった」と話す。食事を取り分けながら、自然と会話が弾む。

元ヤフー社員らが起業。延べ250人が参加。年齢層も幅広い(写真:編集部撮影)

タノバ食堂の目的は、深刻な孤立状態に陥る前に地域とのつながりを回復させることだ。主宰するTanoBaの代表・宮本義隆さん(53)は、「食堂で顔見知りになることで、町で会ったときにあいさつできる関係になってほしい」と話す。

特徴的なのは、補助金や寄付に頼らない自立した運営だ。参加は予約制だが、参加費は自分で料金を決める自由価格制。いくら払ったかはわからないように、現金を封筒に入れるかバーコード決済で支払う。現在は食材などのコストを差し引いて余剰金が出るようになった。収支はホームページで公開。参加者全員で運営を維持する意識を持ってもらう狙いがある。

食堂の運営は宮本さんらマネジャーが中心となり、料理好きなボランティアが支える。会場は世田谷区の龍雲寺の施設を無償で借りている。9月からは、野菜を提供する企業や地元のコーヒーショップとも提携した。運営にはこうした地域のパートナーが欠かせない。

タノバ食堂のモデルとなったのは、フランスで15カ所の食堂を運営する「小さな食堂」というNPOだ。タノバ食堂も仕組みをフォーマット化して、全国各地に食堂を広げることを目指している。

2カ所目を開くには新たなパートナーと、食堂を運営するマネジャーが必要だ。将来は余剰金でマネジャーに報酬を支払うことで、地域での雇用の創出も考えているという。

井艸 恵美 東洋経済 記者

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いぐさ えみ / Emi Igusa

群馬県生まれ。上智大学大学院文学研究科修了。実用ムック編集などを経て、2018年に東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部を経て2020年から調査報道部記者。

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野中 大樹 東洋経済 記者

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のなか だいき / Daiki Nonaka

熊本県生まれ。週刊誌記者を経て2018年に東洋経済新報社入社。週刊東洋経済編集部。

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