最低賃金引き上げが「日本人の給与増」に必要な訳 恩恵受けるのは最低賃金で働く人だけではない
東京、大阪、神奈川を含む12都道府県で、最低賃金を得ている人の中に生活保護を受ける資格を持つ人がいることがわかり、国民は対策を求めた。自民党は2007年に最低賃金法の改正で民主党と合意した(背景には衆議院戦における民主党との競り合いが激化していたことがある)。
最低賃金の引き上げは、企業側が予測していたような大きな雇用喪失を引き起こさなかった。2000年以降に各国で実施された研究のほとんどが、最低賃金の段階的引き上げは雇用損失をゼロに近づけることを示している。だからこそIMFは2016年の報告書で、日本の最低賃金の大幅引き上げを勧告したのだ。
非正雇用が増えると、正規雇用者も影響を受ける
アメリカも似たような経験をした。約10年前から、多くの州や市が最低賃金を15ドル(約2200円)に引き上げた。現在、アメリカの労働者のうち15ドル未満の賃金を得ているのはわずか13%で、ほんの数年前の32%から大幅に減少した。それでも雇用は拡大しており、失業率は最低賃金であることが多い若年労働者であっても依然として低い。
2009年から2019年にかけて、最近のインフレ率が上昇する前であっても、全労働者の実質賃金は10%近く減少した。その主な理由は非正規労働者の増加である。
2019年、正規労働者の平均時給がほぼ2400円(ボーナス含む)だったのに対し、パートタイム労働者の平均時給はわずか1100円(女性)と1200円(男性)だった。2010年代には、非正規は全従業員の4割近くに達していた。
正規と非正規の賃金がまったく変わらなかったとしても、非正規が増えるだけで平均は下がるという算段だ。それだけではない。非正規雇用を増やすと、雇用主は正規雇用に対する交渉力を強め、その結果、賃金が抑制される。
これにより、2009年から2019年にかけて、正社員の実質賃金はほぼ横ばい(上昇率は2%未満)にとどまっている。非正規労働者の実質賃金は8%上昇したが、これは主に最低賃金の上昇によるものである。
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