人気「ミックス犬」誕生の裏にある切なすぎる運命 「唯一無二の存在」と主張する人に言いたいこと

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■ミックス犬の繁殖は法の抜け穴だらけ

ミックス犬は交雑種なので、血統書はありません。誕生日の偽装が容易なため、法律で定められた「56日規制※」をすり抜け、若年齢で販売しているケースがあると耳にしています。健康上に問題が生じても、「ミックスだから何が起こるかわからない」ですませられます。

※改正動物愛護管理法では、生後56日を経過しない犬や猫の販売、販売目的とする引渡し・展示が禁止されている。

また、環境省令の「数値規制」では、雌犬の生涯出産回数は6回まで、交配年齢は6歳までという繁殖制限がありますが、血統書がなければ誰が母犬かわからず、それらもごまかすことが可能になります。

悪徳ブリーダーにとって、ミックス犬の繁殖は「法の抜け道」だらけです。そもそも、純血犬種の繁殖をしている「責任あるブリーダー」は、ミックス犬を作出することはありません。

その犬種を心から愛し、血統、犬種標準、健康を重視しながら、健全に繁殖し、後世につなぐ努力をしています。受け継がれてきたものを崩す行為は絶対にしません。

トイ・プードルの繁殖歴40年以上のブリーダーのKさんは、「ミックス犬と耳当たりのいいネーミングで呼ばれて高値で販売されているが、以前は管理不足で生まれてしまった子犬。これを認めることは、管理不足を容認するようなもの。いまミックス犬を繁殖しているブリーダーの多くは、“人気があるので売れる”と考える利益優先のブリーダーだ」と話します。

すべての犬が「唯一無二」の存在

実際、交配をする場合には、母犬の健康上のリスクはないか、無理な交配ではないか、親から遺伝病を引き継ぐ可能性がないか、NGな毛色の組み合わせではないか、妊娠中に母犬に過剰な負担がかからないか、帝王切開になるリスクがないか……といった配慮が必要です。

しかしながら、知識や経験、モラルが欠けているブリーダーが多すぎると、筆者は感じています。

産まれてきた犬の成長、健康において、ブリーダーが全責任を負う覚悟がなければ、純血犬種はもとより意図的にミックス犬を作出すべきではないと考えます。人為的に無理な交配を行うことは「命の冒涜」であり、倫理的にも慎むべき行為です。

ペットショップやブリーダー紹介(仲介)サイトなどで表舞台にいる大人気のミックス犬の陰には、その舞台に上がることさえできない不幸な犬たちが純血犬種以上に多く存在しているという現実があります。

ミックス犬を「唯一無二」と声高に主張する人がいますが、すべての犬が「唯一無二」です。

そんなうたい文句に惑わされることなく、飼う側も正しい知識を身につけ、どのような犬をどこから迎えることが「人と犬の幸せな共生」につながるのかを、しっかりと考える必要があるのではないでしょうか。

阪根 美果 ペットジャーナリスト

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さかね みか / Mika Sakane

世界最大の猫種である「メインクーン」のトップブリーダーでもあり、犬・猫などに関する幅広い知識を持つ。家庭動物管理士・ペット災害危機管理士・動物介護士・動物介護ホーム施設責任者・Pet Saver(ペットの救急隊員)。ペットシッターや保護活動にも長く携わっている。ペット専門サイト「ペトハピ」でペットの「終活」をいち早く紹介。豪華客船「飛鳥」や「ぱしふぃっくびいなす」の乗組員を務めた経験を生かし、大型客船の魅力を紹介する「クルーズライター」としての顔も持つ。

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