意外!ソニーのテレビが欧米で復活していた どん底から這い上がるために何をしたのか
ソニーヨーロッパ社長には、インドでソニーブランドを伸ばした玉川勝氏が就任。「システムが出来上がっていない新興国において一からマーケティングとセールスの仕組みを作り上げた経験がヨーロッパで生きた」(玉川氏)。それまで欧州各国ごと、個々にバラバラだった組織をひとつにまとめ上げた。各国で情報を共有しながら売れる製品、売れない製品、売れ場所、売れない場所を分析し、常に調整を進める手法だ。
その手法はデータの徹底した分析と現場主義に基づいている。データを掘り下げて問題を発見し、現場を視察して原因を究明。改善結果をデータで検証するという正攻法を繰り返したという。その徹底ぶりについていけない幹部は去り、欧州現地法人のトップは、この3年を経て、"現場で汗をかく人間"に入れ替わった。
ソニーを扱う販売店の選択も進めた。もっとも販売効率が高い販売店に重点的にソニー製品を置き、費用対効果を高めるといった手法も取り入れている。
ソニーのテレビ出荷台数が急増
その成果が最初に出ているのがテレビである。2013年は前年比で67%も出荷台数が伸びた。続く2014年も同33%増。しかも4Kテレビや高付加価値のフルHDテレビにフォーカスした結果、平均売価も上昇している。
前出の長尾氏は「マーケティングにおける分析の徹底により、製品開発へのフィードバック面でも良い影響が生まれている」と話す。顧客ニーズを正確に捉える努力をすることで、製品の機能やターゲットとする価格帯、デザインなど、さまざまな面で「売れる製品」を作れる情報が集まるようになったという。
現場・現実主義は、これまでのソニーのイメージとはかなり違うものだ。これまでのソニーは、多様な製品を結びつけ、プロフェッショナル分野からエンドユーザー製品、映画・音楽まで幅広いジャンルをカバーする強みを生かすことを目指しており、実際、それが機能した時期があった。グループ全体で新技術・新規格の早期立ち上げを進め、先行者利益を取りに行くのが、ソニーらしさだったともいえる。
その意味では、このマーケティングの取り組みは、ソニーらしくないものの典型だ。しかし少なくとも数字の面では、その成果が現れていると言えるだろう。
このソニーとは対照的で、かつてのソニーらしさを彷彿とさせているのがLGエレクトロニクスだ。
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