藤野 テロのような突発的事象は織り込めませんが、米国の利上げの可能性にしても、中国経済のスローダウンにしても、すでにわかっていたことですから、それをマーケットが織り込むのは当然のことです。
渋澤 確かに、米国は過去の歴史になかったほどの金融緩和を行い、長期金利は極めて低水準になったわけですから、そこから利上げをした場合のインパクトは、なかなか織り込みにくい面があると、僕は思うのですよ。ただ、長期投資を前提にするならば、動揺するほどのことではありません。
市場を「俯瞰」できるかが問われる
中野 俯瞰しなければなりませんよね。
渋澤 量的金融緩和から出口を模索する時は、質が問われます。量がなくなるわけですから、やはり質ですよね。
中野 質が問われるというのは、つまり大きな目で全体を見ることです。足元の値動きばかりを見ていると、本来の姿が見えなくなってしまう。本来の姿を冷静に見れば、米国の金利が上がるのは間違いありません。なぜかというと、少なくとも先進国において金利が上がるのは、経済が順調だからです。
藤野 質が問われる時代だからこそ、伊藤レポートが出て、スチュワードシップコードやコーポレートガバナンスコードが出てきたわけですが、これらは漢方薬みたいなものだから、日々改善努力を続けることによって、ジワジワ効いてきます。それと運用会社としては、これからフィデューシャリー・デューティー、つまり「受託者責任」が問われるようになってきます。
中野 セゾン投信はいち早く「フィデューシャリー宣言」を出させてもらいました。
渋澤 ただ、どうなんでしょう。昔から受託者責任とか、なんとか責任という言葉が出てくるけれども、ほとんどの場合、それは担当者が責任を持ってやるということではなく、逆に責任を取りたくないから、使われてきた言葉に聞こえたケースが結構ありました。
中野 受託者責任というか、顧客への忠実義務という言葉が最も適切な表現かと思うのですが、日本の運用会社の場合、忠実義務を負っている先が違うように思えます。お客様よりも、株主や会社の利益だったりします。
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