稲盛和夫さん「胃がんがわかっても平常心」の強さ 30年間にわたり彼を見てきた参謀のノートより

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「ミスをして迷惑をかけてしまった」「親しい友人とけんかしてしまった」「約束を破られた」というようなことは日常茶飯に起こります。それで気落ちしてくよくよしても、何も解決しません。むしろ、それで悩み続けていると健康を害してしまうかもしれません。

反省すべきは反省し、「覆水盆に返らず」というように、終わったことは仕方ないと忘れて、すぐに明るく前向きに一生懸命生きるべきなのです。

このように心がけることで平常心が保てる。つまり、「一生懸命生きて安心立命できる」のだと稲盛さんは教えているのです。

何事にも動じず、物事を深く考える

私が、最初に平常心の大切さを痛感したのは、稲盛さんが胃がんになったときです。それは稲盛さんが65歳のときでした。

その数週間前から、稲盛さんは食事後、胃が痛むと言って胃薬を飲むようになっていました。たまたまその年は人間ドックでの検診が遅れていましたので、私は人間ドックにすぐに行くことを勧め、そこで胃がんが見つかりました。

稲盛さんはそのことを知ると少し驚いたようですが、入院するまでは予定通り仕事をすると話し、動ずることはありませんでした。

手術では胃の3分の2ほどを摘出したのですが、そのとき進行性のがんであることもわかり、手術が遅れると大変なことになっていた可能性もあったそうです。しかし、それも冗談のように明るく話していました。

胃がんの手術は難しいものではないのですが、回復は思わしくありません。あとで縫合がうまくいっていないことがわかり、結局、入院は1カ月あまりの長期になりました。

その数カ月後、稲盛さんは胃がんの手術時に予定していた得度をし、術後十分に体力も回復していない身体で仏門に入り、厳しい修行を始めます。

その修行が終わると、従来のように精力的に仕事をするようになるのですが、その翌年、腸閉塞を起こし、また1カ月ほど入院します。その1年後には出張先の南アメリカで腸閉塞を再発させ、緊急帰国をして入院します。

このように、命にかかわるような病に短期間で3回も罹り、入退院を繰り返すのですが、それでも常に自然体で、取り乱すことはまったくありませんでした。それを見て私は、平常心とはこういうことかと感じたのです。

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