習近平の理想は始皇帝、台湾併合は中華統一の一環 強国を目指した始皇帝の思想を中国共産党が踏襲

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
兵馬俑。死後も始皇帝を守り続けることが求められた(写真:nishi220/PIXTA)
習近平政権の下で、秦帝国や始皇帝の評価が再び高まりつつあります。「台湾などが中国に属するべき」との主張を正当化するうえで、中華の統一者である始皇帝を持ち出すことが好都合だからです。
※本稿は、『中国ぎらいのための中国史』より一部を抜粋・編集したものです。

中国人の国家観

近年の習近平体制のもとで、秦帝国や始皇帝の評価は再び高まる気配をみせている。今回のキーワードは「大一統」だ。これは天下のさまざまな人々が、中華文明の1つの中央権力のもとに統合された状態のことで、多くの中国人にとっては理想と見なされる国家観である。

「我々の悠久の歴史は各民族の共同作業によって紡がれてきた。(略)秦が書体・車軌・度量衡・道徳規範を統一したことは、中国という統一された多民族国家が発展する道筋を開いた。これより後、いかなる民族が中原に入ろうとも、みな天下の統一を自らの責任であると見なして、中華文化の正統をもって任じた──」

こちらは2023年8月15日、中国共産党のプロパガンダ部門の特設サイト『学習強国』に発表された「“大一統”と中華民族共同体意識の確固たる形成」なる論文で引用された習近平の言葉だ(発言自体は2019年9月)。

現在の中国政府の秦や始皇帝に対する評価を示すと考えていいだろう。似た主張は以前からあったものの、党の理論誌『求是』など当局系の媒体の記事や、党に忖度する中国の歴史学者が執筆した関連論文は、ここ数年で明らかに増えている。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事