でも、木村石鹸に戻って釜焚き製法に触れたり、さまざまなモノづくりの現場を見たりして、考え方が180度変わりました。「続けることに価値はある」という考え方に。
いや、正確に言うなら「続けることに価値はある、としておきたい」と、思うようになりました。 「一度やめてしまったものを、復活させるのはそう簡単なことではない」からこそ、続けていかないといけない。続けていくことそのものにも価値があると思っておきたいのです。
「効率」の追求で社会は豊かになるのか?
ビジネスでは、何よりも「効率」という価値がものすごく強い。「続ける」という明確な意思がなければ、効率の追求により切られてしまうもの、やめざるを得ないものはたくさん出てきます。
そうやって効率を追求し、非効率なものを排除していった結果、それで実現される世界や社会が豊かだと言えるのか?
僕はどうも違う気がするのです。「固形石鹸」の復活は、どう考えても割に合わないし、非効率すぎます。固形石鹸を商品のラインナップに加えるだけなら、製造を請け負ってくれる会社にお願いするほうが圧倒的に楽です。
でも、それでは意味がない。今回は、すべてゼロから自前でやることにしました。そして、なんとか復活のスタートラインに立つことができた。しかし、ビジネスはこれから。せっかく復活させた固形石鹸。始めた以上は、どうにかして続けていきたいと思っています。
そのためには、ビジネスのバランスを取っていく必要があります。固形石鹸が爆発的に売れて、儲かる日はたぶんこない。でも、続けていけるレベルで収益バランスは取らないといけません。
それは「液体石鹸」や「粉末石鹸」も同じです。釜焚き製法を続けていくためには、ビジネスとしても成り立たせていく必要があります。続けることに価値があるからといって、ビジネスがまったく成立していなければ、さすがに続けていくことはできない。
非効率、でも大切なことを、大切にしながら、どうにかして、そのバランスを取っていく必要があるのです。
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