木村石鹸「非効率な」固形石鹸づくり再開の物語 一度やめたものを復活させるのは大変だった

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でも、木村石鹸に戻って釜焚き製法に触れたり、さまざまなモノづくりの現場を見たりして、考え方が180度変わりました。「続けることに価値はある」という考え方に。

いや、正確に言うなら「続けることに価値はある、としておきたい」と、思うようになりました。 「一度やめてしまったものを、復活させるのはそう簡単なことではない」からこそ、続けていかないといけない。続けていくことそのものにも価値があると思っておきたいのです。

「効率」の追求で社会は豊かになるのか?

ビジネスでは、何よりも「効率」という価値がものすごく強い。「続ける」という明確な意思がなければ、効率の追求により切られてしまうもの、やめざるを得ないものはたくさん出てきます。

そうやって効率を追求し、非効率なものを排除していった結果、それで実現される世界や社会が豊かだと言えるのか?

固形石鹸
油の関係で、泡立ちはあまり良くないという。しかし「とにかく洗い上がりのもっちり感とさっぱり感の絶妙なバランスが良い」と木村社長(写真:木村石鹸)
木村石鹸の固形石鹸
「少しポップさと楽しさもありながら、ちゃんと100年の伝統も感じられる」、そんな木村石鹸らしさを大切にデザインした(写真:木村石鹸)

僕はどうも違う気がするのです。「固形石鹸」の復活は、どう考えても割に合わないし、非効率すぎます。固形石鹸を商品のラインナップに加えるだけなら、製造を請け負ってくれる会社にお願いするほうが圧倒的に楽です。

でも、それでは意味がない。今回は、すべてゼロから自前でやることにしました。そして、なんとか復活のスタートラインに立つことができた。しかし、ビジネスはこれから。せっかく復活させた固形石鹸。始めた以上は、どうにかして続けていきたいと思っています。

そのためには、ビジネスのバランスを取っていく必要があります。固形石鹸が爆発的に売れて、儲かる日はたぶんこない。でも、続けていけるレベルで収益バランスは取らないといけません。

木村社長
「石鹸屋としての原点に立ち戻る」という願いを込め、固形石鹸を復活させた木村社長(写真:木村石鹸)

それは「液体石鹸」や「粉末石鹸」も同じです。釜焚き製法を続けていくためには、ビジネスとしても成り立たせていく必要があります。続けることに価値があるからといって、ビジネスがまったく成立していなければ、さすがに続けていくことはできない。

非効率、でも大切なことを、大切にしながら、どうにかして、そのバランスを取っていく必要があるのです。

【写真】試行錯誤をして復活させた固形石鹸づくりの様子など(7枚)
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木村 祥一郎 木村石鹸工業株式会社 代表取締役社長

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きむら しょういちろう / Shoichiro Kimura

1972年生まれ。1995年、大学時代の仲間数名とITベンチャー企業を起ち上げる。以来18年間、商品開発やマーケティングなどを担当。2013年6月、家業である木村石鹸工業株式会社に入社し、2016年9月、四代目社長に就任。石鹸を現代的にデザインした自社ブランド商品を展開。OEM(受託製造)中心の事業モデルから、自社ブランド事業への転換をはかる。

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