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木村石鹸「非効率な」固形石鹸づくり再開の物語 一度やめたものを復活させるのは大変だった

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  • 木村 祥一郎 木村石鹸工業株式会社 代表取締役社長
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木村石鹸に戻って久々に工場内に入り、実際に釜焚きしている様子を見て、こんな大変なことをやっているのかと驚愕したのと同時に、その職人の姿や釜から沸き立つ湯気、乾燥中の粉末石鹸、老朽化が進んだ古びた工場が、ものすごくカッコいいものに見えたのです。

他メーカーが自社での石鹸製造をやめていく中で、木村石鹸が釜焚き製法を続けてきたのは、親父が「やめるな」と言ってきたからです。事業や経営のことにあまり口出しをしない親父ですが、ここだけは譲らなかった。

それは親父が「釜焚き」が好きだという理由もあります。今は足腰も悪くなり、さすがに危ないので無理ですが、よく親父は「石鹸つくりたい」「釜焚きしたい」と言っています。「わしはどんな油でも石鹸にしたるで」と豪語するのです。

伝統的な「釜焚き製法」にこだわり、職人の手作業で石鹸づくりを続けている(写真:木村石鹸)

あんなに面倒で大変な作業なのに、親父は「おもしろい」「やりたい」と言う。不思議です。そして、おそらくですが、一度やめてしまったら、もう二度と復活させることはできなくなる、という実感もあるのだと思います。

「続けることに価値はある」

後で聞いて知ったのですが、親父は固形石鹸もやりたかったそうです。でも、復活させることができなかった。やめるのは簡単ですが、やめてしまったらもう終わり。二度と、釜焚き復活なんてできない。

ならば、続けられるなら、続けていくべきじゃないか。そんなふうに考えているのではないかなと思います。

僕自身は、少し前まで、ビジネスにおいて「続ける」ことを目的化するのは危険なのではないかと思っていました。「家業」「後継ぎ」みたいな考え方に苦しめられてきた反動もあったのだと思います。

ビジネスには、社会をよくするとか、人々の暮らしを豊かにするとか、何かしらの目標があり、その目標のために会社という組織がある。

だから、目標を達成したら、会社はなくなってもよい。それが、目標よりも、会社や事業を続けていくことが目的になってしまったら意味がないんじゃないか。そう考えてきました。

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