「こんな上司がいたら、会社辞められないですよ」 離職の「原因」となる上司、「抑止力」となる上司

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ある製造業の会社の取締役の方が、こんな話をしてくれました。

「私は元々不器用で、工場で働いていたころは仕事を覚えるのが遅くて、しょっちゅう上司に怒られていました。本当につらかったですよ。だから何度も辞めようと思いました。でも、結局35年間、辞めなかったんです」

その理由を聞くと彼はこう話してくれました。

つらいときにかけてくれた「社長の一言」

「若いころは本当につらかったですが、あるとき、社長が本社から工場に来たんです。そして、私にこう声をかけてくれたんです。

『君は仕事を覚えるのに苦労してるみたいだな。君は周りと比べるな。昨日の自分より少しでも成長することだけを考えなさい』。

同僚と比較して劣等感にさいなまれて、極度の自己嫌悪に陥っていたので、その言葉を聞いたとき、目の前がぱっと開けた感じがしました。

それで社長に言われたとおり、周りと比べず、昨日よりも少しでも成長できるように日々の仕事に向き合いました。

それで半年くらいしてから社長がまた声をかけてくれたんです。『どうだ。前の自分より成長してるか?』って。それで私がどう成長したかを説明したら、『いいじゃないか! それでいいんだ! これからもそうやって頑張れよ』って喜んでくれました。

もう嬉しくて、その日の帰り道に涙が出ました。そして社長が自分の成長を喜んでくれた、こんな自分のことを社長はちゃんと見ててくれている、この人に一生ついて行こうと思いました。そうやって昨日の自分より成長しようってコツコツ頑張って、いまは役員にまでなれましたよ」

この社長は落ちこぼれの若手がいると聞いて、寂しい思いをしていないかと気遣ったのでしょう。

そして昨日の自分より成長することを促し、次の機会にまた声をかけ、成長の跡を褒めたのです。

こういった関わりによって、「社長は自分のことをちゃんと見ててくれている」と感じ、それが「この人に一生ついて行こう」と思わせるほどの力を持ったわけです。

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