危機にこそ、経営者は戦わなければならない!言い訳をしない実践経営学 金川千尋著

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危機にこそ、経営者は戦わなければならない!言い訳をしない実践経営学 金川千尋著

疾風に勁草を知る--激しい風が吹いているときにこそ強い草が見分けられる、すなわち逆境こそ意志や節操の固さがわかるという意味だ。企業もまた、危機においてその強さや経営者の真価が問われるわけだが、信越化学工業はまさに“勁草”といえるだろう。

同社は塩ビと半導体シリコンウエハーで世界1位、シリコーン樹脂では国内1位のシェア(11年現在)を誇る企業だ。その上、13期連続(1996年3月期~2008年3月期)で最高益を更新した記録を持つ。リーマン・ショックでその記録は止まったものの、継続して利益を叩き出している。

さらに東日本大震災の時もその真価を発揮。福島県と茨城県の工場が被災して創業停止となったが、以前からリスクに備え生産拠点を分散させていたため、他拠点をフル操業させて需要家への供給責任を果たすことができたという。

同社をこのような危機に強い企業に育て上げたのが、著者である代表取締役会長の金川千尋氏だ。

実は、あのGEの元CEOであるジャック・ウェルチ氏からも称賛されたという名経営者。本書は、著者が02年に出版した『社長が戦わなければ、会社は変わらない』(東洋経済新報社)に大幅加筆した一冊で、震災後のグローバル時代に経営者が持つべき覚悟を始め、製造業が生き残るためのヒントなどが凝縮されている。

著者の経営は合理性の追求にある。大震災を機に多くの日本企業は危機管理の重要性に今さらながら気づいたようだが、著者は以前からたとえ好調期にあっても「最悪を想定し、常に備えよ」の姿勢で経営に取り組んできた。変化の兆候を見逃さず一歩先の対策を打つため、著者は毎日市況に目を光らせ、常に需要家の声を聞く努力を怠らない。

そして会社の目的は株主に報いることと考え、危機でも利益を出すという執念を持って冷静にトップダウンで判断を下していく。常に意識するのは、「世界に通用する企業になること」。90年の社長就任以来、特に官僚主義と非効率的な陋習とは徹底して闘い、あらゆるムダを排除してきた。

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