危機にこそ、経営者は戦わなければならない!言い訳をしない実践経営学 金川千尋著

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そんな合理的手法は、当然ながら人材マネジメントにも及ぶ。生産性を上げるため「少数精鋭」にこだわり、プロの育成に尽力する。多くの日本企業では幹部を育てるため様々な部署を経験させるのが慣習となっているが、ジョブローテーションは「意味がない」と著者は切り捨てる。一つの仕事を成功させることができる人は、他の仕事をやらせても出来てしまうと考えるからだ。そのため、同社では長く一つの仕事をやらせ、その分野の能力を磨いてもらうような教育を行うことで企業運営の効率化を図っている。

人事にもメスを入れてきた。歴史の古い会社や巨大企業では人事部が権力を握るケースも多いが、合理的な適材適所を行うためにも「人事部に中央集権的な強い力を持たせるべきではない」と強調する。

人事は社員の日常行動を見ていないので、適材かどうかの判断などできないどころか、風評で人を判断して異動を決めてしまう恐れもあるからだ。適材適所はラインで行うべきとして人事部の官僚主義と徹底的に闘ってきたようだが、このあたりのくだりには歯に衣着せぬ表現が多く、人材登用への思い入れがひしひしと伝わってくる。

「雇用は事業での必要に応じて考えるべき」との考えから、新卒の大量採用も長年行っていない。著者が社長に就任する前は600人もの新卒を採用していたそうだが、現在新卒社員は毎年50人ほどに絞って必要な部署に投入している。どこまでも合理的だ。

本書を読めば、危機に強い“勁草”たる企業には、やはり支える社員一人一人が“勁草”として育つシステムが完備されていることがよくわかる。経営論にとどまらず、強い組織作りの要諦を教えてくれる一冊だ。

東洋経済新報社 1680円

(フリーライター:佐藤ちひろ =東洋経済HRオンライン)

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