館外に見えたデラックスロマンスカーと日光軌道の電車。普段は館内から車内に入ることができる。取材に訪れたときは、日光軌道の車両は修繕工事の作業中。長く車両を在りし日の形のままにとどめておくためには、こうした作業も欠かせない。
ぐるりと館内を歩いたつもりでも、東武博物館はまだまだ終わらない。外からはわかりにくいが、この博物館は2階建て。2階にも展示スペースが待っているのだ。
「2階ではやはりリアルタイムコーナー、ウォッチングプロムナードが人気です。ちょうどスカイツリーラインのレールのところに目線が来るようになっているので、行き交う列車を眺めることができます。特急はあっというまに通過してしまいますが、各駅停車はすぐ目の前に台車が来るのでおもしろいですよ。この角度から車両を見る機会って、なかなかないと思います」(山田館長)
また、2階にはもう1つ“東武博物館ならでは”の展示があるという。それは、「向島サテライト」。この一角は向島の歴史などに関する資料を展示している。向島といえば、永井荷風の『濹東綺譚』をはじめ、多くの文豪の作中にも登場した町だ。そうした歴史や地域の伝統工芸品などが「向島サテライト」の中に並んでいる。
資料が集まってくる
「こうした地域の資料もあわせて展示している鉄道系博物館はほかにはあまりないと思います。やっぱり東武はこの地域の中で育ってきた鉄道ですから、地域との関わりも大事にしていきたいです」(山田館長)
2階には、他にも東武鉄道の歴史を象徴するような記念物をまとめたコーナーなどがある。図書閲覧室には東武鉄道に関する資料はもちろん、他の鉄道会社の社史なども揃っている。
いまも東武鉄道から本社などで保管されていた資料が届くのだとか。
「昔の社員の方から古い写真をドサッと寄贈していただくこともあります。ただ、正直整理がまだまだ追いついていなくて……。写真ひとつとっても、いつどの場所で撮影されたものなのかを確認していく作業は大変です。今後はそうしたこともしていければと思っています」(山田学芸員)
もしかすると、どんどん増える資料の中にも、鉄道ファン垂涎の“お宝”が眠っているかもしれない。
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