一方、決選投票で敗れた高市氏は、現在の経済状況における増税にははっきり反対していた。日本の財政赤字は2024年4~6月時点ですでにGDP比率2.7%まで縮小しており、先進各国の中でもかなり「健全」と言える状況になりつつある。
民間部門への増税は経済活動への明らかなブレーキに
インフレの一時的上振れと徴税基盤がしっかりしているので税収が大きく上振れているためだが、これは、特に所得回復が遅れている家計部門の税負担が大きすぎることを意味する。
この点がコロナ禍後の日本の経済成長の足かせになっているのだから、民間部門への増税は経済活動にブレーキをかけるのは明らかである。筆者は、高市氏が経済・財政の状況を、石破氏や小泉氏よりも正確に理解していたと評価している。
また、金融政策の経済成長に及ぼす影響は、財政政策より大きいので極めて重要だが、金融政策について自らの考えを、はっきり示しているのは高市氏のみだった。「基調的なインフレ率が2%以下に低下しつつある中で、日銀は利上げを慎重に行うべき」との考えを述べていた。筆者は同様の見方を持っており、7月末の日銀の利上げ判断は適切ではなかったと考えている。
渡辺努・東大教授が述べているように、「テーラールール」など基本的な政策反応関数を前提にすれば、インフレ想定の上振れに応じた利上げは正当化される。
実際には、経済成長率想定の下方修正が続く中で、インフレ想定がほぼ一定である日銀審議委員の見通しが矛盾しているのだが、通常そうした経済状況で利上げは正当化されない。
そして、筆者は今に至るまで、なぜ「今の政策金利が緩和的すぎる」と言えるのか、日銀から説得力がある説明を最近聞いたことがない。7月までの「円安が行きすぎている」という一種の風説に直面して、政策姿勢が揺らいでいるのが実情なのだろう。
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