ソニーの「最新Xperia」は何が進化したのか 強化するべき製品分野は明確に
ただし、より良い製品にはなっているものの、新しい打ちだしはXperia Z5 Premiumの4Kディスプレイぐらいだろうか。他社に先駆けて採用したディスプレイは他モデルよりもやや画面が暗く、高精細ではあるもののサイズや重さ、バッテリなど性能バランスを崩しているという印象を持った。
また、ソニーモバイルコミュニケーションズのトップである十時裕樹氏が打ち出している開発モデルやシリーズの集約といった路線も反映されていない。Xperiaシリーズが新しいリーダーの元に変化するのは、次の世代からになるだろう。
プレイステーション4向けに開発しているVRディスプレイ技術「プロジェクト・モーフィアス」も、会場に並べ、体験できるようになっている。いまやすっかりソニー製品として定着してきた一眼カメラも新製品を投入し、得意のプレミアムコンパクトカメラとともに、ブースでも注目を集める商品になっている。当然、スマートフォン、カメラを中心に多くのリポートが書かれることだろう。
しかし、筆者は別のポイントに着目したい。会場を見回し、今年もっともソニーが独自性を出すことができているのは、他の商品ジャンルなのだ。
「高音質」で新興ブランドに対抗
それが、長らくソニーを支えてきた看板事業である「オーディオ」だ。とりわけ同社が力を入れているのが、若い世代のオーディオファンに対する訴求。スマートフォンの普及によって単機能の専用機であるポータブルオーディオプレーヤー市場は大幅に縮小した。しかし若年層との接点として”音楽”は未だに大きな存在だ。
ところが高品位なイヤホン、ヘッドフホンを提供してきた一流ブランドの多くは、スマートフォン普及期に音楽ファンになった若者たちに、そのブランドを訴求できていない。ソニーは35歳以上、ゼンハイザー、ボーズといったメーカーは40歳以上といったセグメントで強いものの、20代から30代前半の顧客層には、アップルが買収したビーツ・エレクトロニクスしかブランドとして届いていない。それが現状だ。
そこでウォークマンをより高音質に仕上げるとともに、ヘッドフォンに新しいデザイン、スタイルの製品「h.ear」シリーズを展開。ファッション性にも力を入れつつ、ビーツにはない高音質で訴求する。現代的なオーディオ機器の利用スタイルを考慮し、小型オーディオシステムを再定義した「CAS-1」も素晴らしい仕上がりを見せていた。
グローバル向けのテレビ新商品が、一通りお披露目を済ませているという面もあるが、それを考慮しても映像機器については、以前のソニーほど迫力を感じなくなっている。今年1月に米ラスベガスで開催されたCESで発表した超薄型テレビなどを並べたものの、新しく発表する大型製品はない。ハイダイナミックレンジに対応したホームプロジェクターなど、映像エンスージアストを満足させるソニーらしい商品は用意されているが、パナソニックが同社初のOLEDテレビを発表(ただし日本市場向けには出荷されない)したのと比較すると、一歩引いている印象だ。
さらに先頃発表された「UHDブルーレイ(4K映像を扱える最新の光ディスク技術)」には幹事企業として技術を提供したものの、関連製品への言及は一切なかった。
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