期待をかける「レケンビ」だが、欧州では承認が却下された。副作用をめぐって議論がある。
残暑厳しい9月9日午後。衆議院第一議員会館の地下会議室に、長身で色白の青年がベテラン社員を引き連れてさっそうと現れた。6月に35歳の若さでエーザイの常務執行役から代表執行役専務に就いた内藤景介氏だ。長年トップに君臨する内藤晴夫氏(76)の長男で、次期後継者と目されている。創業家の4代目である。
その景介氏が訪れたのは、自民党の「MCI(軽度認知障害)に関する勉強会」だ。認知症の前段階に当たるMCIを全国の自治体で検査できる体制の整備、早期発見、早期治療を目標に掲げる。
昨年12月に日本で早期アルツハイマー病(AD)治療薬「レケンビ」を発売したエーザイにとっては、大いなる援軍だ。自治体で定期検診できれば、使用者の掘り起こしにつながる。
がんと並ぶエーザイの重点領域
認知症は、がんと並ぶエーザイの重点領域の1つだ。2000年代の業績を支えた抗認知症薬「アリセプト」は、09年には3228億円を売り上げ、当時の売上高の4割を占めた。しかし特許期間が過ぎると、後発品に置き換えられるのが業界の宿命。アリセプトに続く製品の開発を進め、ようやく日の目を見たのがレケンビだ。
およそ20年ぶりの認知症新薬への期待は大きい。今年3月に公表したレケンビの売り上げシミュレーションでは、26年度に2900億円(日本は約550億円)と予想。32年度には、現行の点滴静注製剤よりも手軽に使用できる皮下注製剤を投入し、血液バイオマーカーによる診断も普及させて「1兆3000億円」(同1300億円)を見込む。
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