驚くべきは、その予想売上高だ。みずほ証券によれば、28年の予想売上高は41億ドル。日本円にして約5600億円と、販売からわずか約3年で超大型薬になる可能性を秘めている。これは、現在中外の屋台骨である血友病薬「ヘムライブラ」の売上高(23年12月期は約2700億円)の倍以上に当たる。
さらに中外にはもう1つ、肥満症関連で注目される開発品がある。筋肉増強作用を持つ抗体医薬品、「GYM329」だ。GLP-1受容体作動薬のデメリットである、筋肉量の低下を防ぐ役割が期待されており、肥満症を対象とする試験が始まったところだ。
時価総額で国内トップに
これらの開発品は、中外の市場価値を大きく押し上げている。何しろ現在、国内製薬企業で時価総額トップなのは、売上高で業界首位の武田や2位のアステラス製薬ではなく、中外なのだ。みずほ証券の都築伸弥アナリストは「中外の株価は、『肥満薬銘柄』としてリリーやノボの株価と連動している」とみる。
2つの新薬候補はいずれも、中外独自の技術によって生み出されたものだ。なぜ世界で注目される領域で開発品を育てることができたのか。その理由は、世界でも類のない独自のビジネスモデルで磨き上げられた「創薬力」にある。
中外が現在の姿に至るきっかけは、今から20年前にさかのぼる。当時の社長で創業家の娘婿だった永山治氏が、スイスの製薬大手・ロシュと結んだ戦略的提携だ。ロシュは中外の株の過半を保有するが、中外は上場と自主経営を維持する、という内容だ。現在、ロシュは中外の株の約6割を保有する。
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