11歳小児がん患者が直面「ドラッグロス」の絶望 海外製薬ベンチャーが日本での臨床開発を除外
2年前、当時9歳の長男、海智くんが「脳幹グリオーマ」という小児がんだと診断されたのは、大阪府に住む大門恭平さんだ。医師からは、余命半年と告げられた。別の病院もいくつか訪ねたが、医師から返ってきたのは「覚悟してください」という言葉だった。
諦めきれず情報収集を続けると、ある情報にたどり着いた。スイスの大手製薬企業、ノバルティス ファーマの薬を使った、脳幹グリオーマの遺伝子異常に対する「ダブラフェニブ」と「トラメチニブ」という2つの薬の併用療法に関する論文だった。
すぐには薬を使えなかった
薬は、特定の遺伝子変異のあるがんに効く「分子標的薬」というもので、薬が効くかどうかは、腫瘍細胞を調べなければわからない。受診すると、海智くんの脳腫瘍も適応となる可能性があった。
まずは腫瘍細胞を調べるための手術をする必要があった。重篤な合併症のリスクもある生体検査を乗り越え、幸いにも併用療法が効くタイプだと判明した。
一刻を争う状況だったにもかかわらず、すぐには薬を使えなかった。当時この薬の併用療法は、海外では小児向けで承認されていたものの、国内ではまだ一部のがんの成人向けでしか承認されていなかったのだ。海外で使われている薬や治療法が日本で使えるようになるまでの時間差のことを、「ドラッグラグ」という。
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