11歳小児がん患者が直面「ドラッグロス」の絶望 海外製薬ベンチャーが日本での臨床開発を除外
ドラッグラグは、希少疾患や小児疾患で生じやすい。患者数が少ないため、製薬企業からすれば、開発にかかる費用や手間に対して想定できる売り上げが小さいなどの理由から、開発が後回しになりがちだからだ。
米国と欧州では、製薬企業に小児用医薬品の開発計画策定を義務づけたことなどにより、ラグは解消しつつある。一方日本では、そのような取り組みが遅れている。
「ラグ」から「ロス」へ
薬が承認されるまでの間、患者には、海外まで赴く、薬を個人輸入する、治験や大学の研究に参加する、といった選択肢があるが、患者や家族の負担は膨大だ。
海智くんは、2023年に北海道大学が開始した小児向けの臨床試験に参加する形で薬を服用することができた。薬のおかげで腫瘍は小さくなり、身体症状は安定している。
だが入院や滞在、北海道~大阪間の複数回の移動などにかかった費用は総計300万円に上った。大門さんが悩み始めた頃、ついに国内でも小児向けでの併用療法が承認された。昨年11月のことだ。
ドラッグラグに対して、政府や企業が無策だったわけではない。例えば薬の審査期間は、以前と比べれば短縮されつつある。小児用医薬品の開発計画策定を努力義務とする動きも進んでいる。
しかし改善に向かい始めた頃、さらに厄介な問題が生じている。日本での薬の承認が遅れるのではなく、そもそも承認される予定自体がないという、「ドラッグロス」だ。11歳になった海智くんもまさに今、この壁に直面している。
「今飲んでいる薬は、いずれ効かなくなる可能性が高いと医師に言われた。次の薬候補を調べたところ、海外のベンチャーが開発した薬で治療できる可能性のあることがわかった。ただ、その薬は日本で治験が行われず、日本で使えるようになるかわからない」(大門さん)。どういうことか。
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