11歳小児がん患者が直面「ドラッグロス」の絶望 海外製薬ベンチャーが日本での臨床開発を除外

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だが、日本法人を持たないベンチャー企業が日本で治験を行うハードルは高い。大規模治験を行う余裕のない企業であれば、米国での承認をゴールとするだろう。

仮に日本で治験を行おうとしても、日本は他国と比べて医療機関の数が多く、治験の対象となる患者が点在している。複数の医療機関とのやり取りは手間であり、言語の壁もある。

日本に永遠に入ってこない可能性も

こうした理由から、日本は、世界規模での治験において除外されるケースが増えている。薬が一度承認されれば、日本に永遠に入ってこない可能性もある。

デイ・ワン・バイオが開発した「トボラフェニブ」も日本で治験が行われないまま、4月米国で承認された。国立がん研究センター中央病院 小児腫瘍科の荒川歩医長は「日本で行われる臨床試験が少ないことが課題。国際共同治験に日本が参加できるよう、国際会議に出席するなどして海外企業にアピールや相談をしている」と話す。

日本では、ドラッグロスを解消するための取り組みが急速に進んでいる。例えば国は、初期段階での日本人向け治験を原則不要とする見解を示した。薬の審査機関であるPMDA(医薬品医療機器総合機構)は、海外ベンチャー企業に日本の薬事制度などを理解してもらうため、年内に米国に拠点を設ける予定だ。民間では、海外ベンチャーの国内治験を支援するサービスを始める動きもある。

7月に開催された創薬エコシステムサミットでは、「日本を世界の人々に貢献できる『創薬の地』とする」ことが政府方針として掲げられた。目下の課題は、海外企業にとって魅力的な環境を早急に整備することだろう。

兵頭 輝夏 東洋経済 記者

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ひょうどう きか / Kika Hyodo

愛媛県出身。東京外国語大学で中東地域を専攻。2019年東洋経済新報社入社、飲料・食品業界を取材し「ストロング系チューハイの是非」「ビジネスと人権」などの特集を担当。現在は製薬、医療業界を取材中。

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