核酸医薬の開発競争をリードするのは欧米勢だ。日本勢の活躍が一部にとどまる背景に、国内の製薬業界が抱える複数の課題が見え隠れする。
「今回承認された本剤は、(中略)供給を予定していません」
8月2日、国産初の新型コロナウイルスワクチンの製造販売が承認された。ファイザーやモデルナのワクチンと同様、メッセンジャーRNA(mRNA)という核酸を用いた技術を活用した、第一三共の「ダイチロナ」だ。日本でmRNAを使った医薬品開発に成功した企業は初めてとなる。
ところが第一三共のリリースに記されたのが、冒頭の一文だ。ダイチロナは現在流行していない起源株が対象。すでに市場にはオミクロン株に対応したワクチンが流通しているため、実用化を予定していないのだ。
第一三共は、新型コロナの感染拡大直後からワクチン開発に着手した。だが、欧米勢に比べると開発スピードの遅れが目立った。奥澤宏幸社長は7月の東洋経済の取材で、「コロナ禍で成果を出せなかったのは本当に残念」と語っていた。今後、同社はmRNA技術を用いてコロナの変異株やインフルエンザに対応するワクチンを開発するとしている。
ワクチン以外で国産の核酸医薬は1品目のみ
今、医療業界でmRNAをはじめとする核酸医薬への注目が高まっている。感染症領域に限らず、従来治療の難しかった希少疾患などで画期的な新薬を生み出す可能性のある「第3の医薬品」として期待されているためだ(詳細はこちら)。
日本の製薬大手も核酸医薬には早くから目をつけて創薬に挑んできた。が、現時点で世界の開発競争における存在感は乏しい。
第一三共は2013年から筋ジストロフィー向けの核酸医薬品の開発を進めていたが、2023年4月に開発中止を発表した。「臨床段階での中止は珍しくないとはいえ、国内では先駆けだっただけに業界には落胆が広がった」(製薬業界関係者)。
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