コロナ禍で一躍有名となった「mRNA」。がん治療や再生医療などへの応用も期待される最先端技術の実力とは。
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小高い丘を切り開いた土地は緑に囲まれ、田畑の先には太平洋が見える。この自然に囲まれた福島県南相馬市の工業団地に7月末、mRNA(メッセンジャーRNA)医薬品の原薬を製造する工場が完成した。
mRNAとは、体内のタンパク質をつくり出す過程で、DNAが持つ遺伝情報を伝達する役割を担うRNA(リボ核酸)分子のこと。mRNAを体内に投与して予防・治療に役立てる技術が新型コロナウイルスのワクチンで初めて実用化され、一気に有名となった。
工場ではmRNAワクチンの原薬製造から製剤化までを一手に担う予定で、年間の製造キャパシティは約10億回分を見込む。mRNA医薬品の受託製造工場稼働は国内初で、本格稼働すれば世界でも最大規模となる。
従来型ワクチンより開発期間を大幅短縮
「この工場の稼働によって、世界で需要が高まるmRNAの生産に貢献することができる」
工場を立ち上げたアルカリスの髙松聡・最高経営責任者は、そう意気込む。2021年に設立された同社は、mRNA技術を用いたワクチン・医薬品の受託製造開発に特化して事業展開する。武田薬品工業からスピンアウトした創薬支援会社のアクセリードと、mRNA医療を手がけるアメリカの製薬企業、アークトゥルス社による合弁企業だ。
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工場の建設は、経済産業省が2021年に新設した、感染症ワクチンの生産体制強化に向けた補助金を活用した。今後のパンデミック時に、ワクチンの製造拠点となる想定だ。「工場が稼働すれば、mRNA医薬品を輸入に頼らず、迅速かつ適切に供給できるようになる」(髙松氏)。
経産省の補助金で採択された17事業のうち、10はmRNA技術に関するものだった。今、官民がそろってmRNAワクチンに期待を寄せるのはなぜなのか。
その理由の1つは、開発スピードの違いにある。
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