退職条件は手厚い。勤続年数の3倍(60カ月分が上限)の給与が特別加算退職金として支給され、再就職支援サービスも最長で2年利用できる。武田の平均年収が約1080万円であることを考えると、管理職であれば、総額8000万円程度の退職金を手にする可能性もありそうだ。募集人数については、募集要項案では未定となっているが、あるベテラン社員は「今回はMRだけで400人程度減るのではないか」とみる。
武田の国内のMR数は現在、1400人程度とみられる(会社側は非公表)。10年代半ばごろまで2000人を超えるMRを抱えていた同社だが、今回のFCPを経てその半分ほどにまで減る格好だ。
MR数の削減自体は武田に限った話ではなく、製薬業界全体で起きていることだ。MRの扱う薬の変化や、医師が情報を得る手段のオンライン化が進み、かつてほどの人員を抱える必要はなくなった。
武田の場合、「10年ほど前までは、『私はMRじゃない、武田のMRだ』と豪語する人もいるほど、同社で働くことにプライドを持っていた」(他社の元MR)。それが今や、数年置きにリストラがある不安定な立場になってしまった。
組織体制もスリム化
人員を削減したうえで、25年度からは組織体制もスリム化する。従来は、消化器疾患、神経精神疾患、希少疾患、ワクチンと扱う薬の領域ごとに4つの事業部に分かれていた。この体制になったのは2年半前で、扱う薬の領域を絞り、MRの専門性を高めることが目的だった。それを今回は、既存薬を扱う第1事業部、新薬を扱う第2事業部の2つにまとめる。百八十度の方針転換といえる。一連の変革を主導するのは、4月にJPBUトップに就任した宮柱明日香氏だ。
この変更を、ある元MRは前向きに捉える。「現在の体制では、疾患領域ごとのMRが何人も各科の先生を訪ねる。病院からすると誰が武田の窓口かよくわからなくなっていた」。一方、前出のベテラン社員は「第2事業部では、1人のMRが幅広い領域の品目を担当する。競合他社が営業部隊の専門性を高める中で、競争力が劣ってしまうのでは」と懸念する。