フランス新政権の短い命と極右次第の解散総選挙 法案審議のたびに不信任投票にさらされる必然
当初、幅広い政治勢力の結集を目指したが、議会最大勢力の左派会派・新人民戦線(NFP)の切り崩しに失敗し、左派系議員の入閣は左派会派の一員ではない独立系議員1人にとどまった。
マクロン大統領がバルニエ氏を首相に任命したのは、老練な政治家として知られ、難しいブレグジット協議をまとめた粘り強い交渉手腕に期待した面もあったのだろうが、近年、反マクロン色を強めていた共和党を政権に取り込むためにも、首相の座を明け渡す必要があったと考えるほうが自然だ。
マクロン大統領は、安定政権の樹立が困難との理由で、国民議会選挙で最多議席を獲得した左派会派が推すカステ氏を首相に任命するのを拒否した。議会の第二勢力に転落した大統領支持会派から再び首相を選べば、マクロン大統領による院政が続いているとの印象を国民に与えかねなかった事情もある。
そうした懸念を払拭するためか、これまでマクロン大統領の下で政権を支えた重鎮は入閣せず、新たに閣僚に就任した議員のほとんどは、閣僚経験のない若手が中心だ。
内相は「移民への強硬姿勢」という配慮
財政再建を託されたのは、経済・財務・産業相に就く大統領支持会派のアルマン氏だが、財政分野での政策理念や手腕は未知数だ。欧州・外務相や国防相が大統領支持会派の所属議員で固められたのは、大統領の専権事項とされる外交や国防分野での影響力を確保する狙いがあるのだろう。
内相には移民に対する強硬姿勢で知られる共和党のルタイヨー氏が就き、これには大統領支持会派から反発の声も聞かれた。
議会の過半数を確保していないバルニエ内閣が存続するためには、政権奪取の機会を奪われた極右政党・国民連合(RN)が左派会派の提出する内閣不信任案に賛成しないことが必要となる。ルタイヨー氏の内相就任は、移民規制の強化を訴える極右勢力に配慮した側面が大きい。
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